17日目(初めての鹿)

予報通り、朝から雨。
思っていたより強い雨のため、午前中の出猟は取りやめ。

12:00を前にして雨が止み、気温15度を超える。
太陽も顔を出して、明るくなってきた。

急いで昼食を済ませ、12:30には猟場へ到着する。
いつもの林道の一番奥から、沢の右側斜面へ向かうことにする。

沢の手前で、足元を見ると、なんと沢ガニを発見!
急な暖かさと雨で、春と思ったのか。
今日は、空気がぬるい。

沢の音も、いつになく大きい。
右の斜面を登り、時折、斜面を平行に進む鹿の通いを
通りつつ尾根を越え、反対の斜面から頂上を目指すことに。

ふと見上げると、かつては杉を出すときに使ったのか
幅50cmほどの古い道がある。
そこを通って、谷を八分目まで一気に上がる。

斜面にある通いには、1cm を超える鹿の糞が落ちている。

あとの二分は、シダの中にある僅かな獣道を慎重に上る。
雨の後のため、落ちている杉の枝や石をシダの中で踏むと滑る。

森は静か。
気温が上がっているので、霧も少し出てきた。

雨が上がったばかりなので、足跡は崩れほとんど判別不能だが、
いつもの猟場だし、こちらの足音も響かない方がいい。

霧から、靄(もや)に変わってきた。
動物が油断してくれるといいけど。

いつもの尾根の周回コース。
尾根近くにくると、上で風が鳴っている。
ゆっくり、尾根の左右に注意しながら、尾根にあがる。

静がでしっとりとした雰囲気。
南側から吹き上げる風のおかげで、足音が更に消される。
いつもは3~5mくらいに近づいた時に飛び立つ鳥も、
真下を過ぎて、やっと慌てて飛び上がるほど。

木漏れ日で、足音が明るくなってきた。
午後からの猟は、いつも動物と会う機会がぐっと減るけど、
午前の強い雨、そして雨の直後は、どんな動きをしているか。

◇尾根をゆっくり歩くこと小一時間。
動物がいそうな雰囲気は、すごくあるんだけど。

谷に入ってから3時間ほど経っても、
一向に足音も声もせず、姿も見えず…。
ただ、松の香りが強く漂っているだけ。

普段なら、ここからの下りの尾根は1時間ほどで降りてしまう。

立ち止まって、水を一飲み。
息を吐いて、下りへ向かう。

「滑らないようにせんとな」

急斜面を音を立てずに降りるのは、本当に難しい。
それでも濡れた落ち葉のおかげで、いつもの半分の大きさしかない。

パラパラと小雨が葉っぱを叩き出した。
森は少し暗くなってくる。

見上げると、雲はまだ薄く明るいが、雲の流れが早い。
「本降りになる前に下まで降りるか」

ここの下りは、細い灌木が多く、左右も下も見通しがきかない。
灌木の間に下りの道を探りながら、早足で降りていく。

突然5m下、左の灌木影から、全速力の鹿の群れが左から右へ抜ける。
1頭目は、一瞬で右の灌木に消えた。

考える間もなく、2頭目を撃つ。

激しく走る鹿と大きな足音。
そして、倒れる姿を右下に見ながら、
続けて3頭目、4頭目へも連射する。

急斜面で、どうやって態勢を保ったのかも分からないほど。
当たったのは、一発目。
弾は、首の後ろの背中から、反対側の下っ腹へ抜けていた。

この17日間、すべて先に鹿に気づかれた。
今日は、雨のおかげ。

20180118

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