鹿の角拾いに(1)

4月も中旬。
鹿の角が春になると落ちるらしいというので、ちょっと探してみました。

猟期も終わり、銃は持たないため両手が使えて、
かつ猟の時と違い普通のスピードで歩くことができるので、楽ちんです。

歩く距離も、同じ4時間でも距離は五倍ほどに伸びます。
川を越えて、急斜面の上り口から山に入っていきます。

一時間半も歩くと、いつもの猟場を超えて、更に奥へ入ることができました。
すると、ピカピカで、指で挟むとクニュと
簡単に潰れる出来たて(?)ほやほやの鹿のふんが、「通い」の所々に見つかるようになりました。

鹿が近かそう!
(銃で撃てるわけでもないのですが、やっぱりワクワクしてきます)

しばらく行くと、今度は袋状のきのこ、ホコリタケがありました。
押すと口から黄色い胞子を吐き出します。

新しい糞
ピカピカの鹿のふん
ホコリタケ
ホコリタケ

 

 

 

 

 

 

ホコリタケの写真を撮ろうと鞄を置いたら、その隣にこちらもホヤホヤの小動物のフンが。2歳児の小指くらいの大きさ。テンイタチでしょうか。上を見上げると青い空、いい天気です。

小動物のふん
ホヤホヤ、小動物のふんも
いい天気
快晴です。

鹿の新しい足跡を追い、通いをどんどん歩いていくと、緩やかな枝尾根を越えると如何にも居そうな場所がありました。

四、五歩歩くと、ビャー!
30kgくらいの雌かな。一目散に尾根沿いを走っていきます。

いつもの猟場から倍以上来たところ。尾根沿いの頂上脇あたり。
山に入って二時間。

鹿に会えた嬉しさ反面、「こんなところまで来ないと会えないなら、捕まえても下すのに一人じゃ五~六時間掛かりそう…」と獲りもしないのにげっそりしてしまいました。

ここから更に30分ほど進んだ後、現在地を地図で確認してから戻ります。

戻る途中で、スリ木を発見。木の皮がえぐれたあたりに泥が付いているのが分かるでしょうか。猪や鹿がヌタ場で泥浴びした後、木にその泥を塗り付けた跡です。木のちょうど反対側だったため、行きには気づかず通り過ぎたようです。

それから、センチコガネが鹿の柔らかな糞を押しているのを発見!動画に取ろうと準備をしている間に、土と枯葉の間に隠れてしまいました。そのため写真は、葉っぱをめくって、センチコガネを周りの土ごと捕まえたところ。するとセンチコガネが貯めた糞も一緒に取れました。

頂上の尾根下あたり
鹿がいたのは、この辺。尾根から5m下あたり
猪のどろ跡
ノタ木
センチコガネ(雪隠黄金)
センチコガネ(雪隠黄金虫)

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、まだ比較的新しい鹿が角でつけた木の傷跡もありました。
(まだ角が取れてない⁉)

鹿の角跡
新しい鹿の角跡
タカサゴきららマダニ
タカサゴキララマダニ

今日は合計四時間。目的の角は見つかりませんでしたが、銃を持たずにゆっくり山に入るのもいいですね。

新緑が萌え、鳥や爬虫類、虫も活発になってきました。そして、マダニも…。

足元から上がってくるもの。シダや木々から落ちてくるもの。量が冬の10倍くらい増えました。要注意です。

写真のマダニは、この帰りに、ひげガニを捕まえようとして服のまま胸まで川に入り、足で押さえたものの深すぎで捕まえられなかったので、川から上がってほんの3mほど木々の間の急斜面を登っただけで、ズボン付いたタカサゴキララマダニです。

春のキノコ狩り

春休み最後の日曜日は、キノコ狩りです。
冬の猟の合間に見つけた場所へ!

小さな谷川を超えて、急斜面を登ります。
何度も登った場所なのに、ピンポイントでキノコの生えた木を見つけるが難しい。
しょうがないから、林道へ上がり、歩きながら下の斜面を見ていると…。
なんと、天然のシイタケを見つけました!

ふと見上げると、アケビの花も満開でした。
また、山に入ると今度は、枯葉の上を歩くカナヘビを発見です。

そしてやっと、枯れ木の上にきくらげを、落ちた枝にはタマキクラゲなどを続々と見つけました!
移動して、別の場所でもキクラゲを取り、全部で二袋を収穫。
無事、「猪もも肉と春のきのこカレー」になりました。

天然のシイタケ
天然のシイタケ発見!
天然のしいたけ
肉厚で、なかなか立派です。
小さいシイタケも
小さいシイタケは、次の楽しみに。
アケビの花も
アケビの花も満開
アケビの花も
秋の楽しみが増えました。
カナヘビ
カナヘビ
キクラゲ
3mほど上にキクラゲ
タマキクラゲ
タマキクラゲも
タマキクラゲ
水に戻すと、きれいなピンク色のゼリーみたいに。
キクラゲ1
その近くにも、きくらげ
シイタケ3
またシイタケ
しいたけ4
天然のしいたけを見つけたのは、今日が初めて。
シイタケ大1
こんな感じで…。
シイタケ大
こちらも立派

3月中旬の猟(ビャー!)

一週間の東京出張から戻って、3月16日14:00から久々の猟へ出かけました。
この日は朝から雨で、午後から少し強くなってきたところ。

いつもの猟場の反対側、川を挟んだ奥へ広がる第2の猟場へ向かいました。
出発地点を過ぎてすぐ、丘の上にある荒れた田んぼには、2~3日前の大型の鹿の足跡があります。

この一ヶ月、なかなか猪や鹿の痕跡が見つからず、今一つ緊張感がなく困っていましたが、雨に打たれながらも、ぐっと気も引き締まります。

今日は、いつもと逆回りで、民家の横を家主の方に挨拶してから、一気に斜面を奥へと登ってきました。

今日は、葉っぱを叩く強い雨の音で、耳が全く効きません。2時間を過ぎたあたりから、谷側に靄(もや)も出てきて、視界も20mくらい先まで何とか見える程度です。慎重に進み、止まっては、右やや後ろから左までぐるっと探す。その繰り返し。

登り斜面では、何も見つけることができずにいました。足跡は雨に叩かれて形を失い、糞も雨に濡れて、いつのものか判断できず。
それでも、ゆっくり進みます。

疲れがでてきたころ、ちょうど下り斜面へ入りました。屈んでは灌木の隙間から、鹿を探しますが、薄暗い谷側の斜面では、10mくらいまで近づかないと、はっきりと何か分からないほどです。

尾根から7m下ったところで、

ビャー!!

中型の雌鹿が、相当驚いたのでしょう。
下り斜面、距離は15m。
飛び上がるほどの声を出して、左10時の方向から、真横へえらい勢いで駆け出していきます。

銃で後を追うも、1秒ほどは灌木の間に姿がちらちら見えるも、その後は灌木が重なり姿が見えなってしまいました。

20秒ほど足音を聞いて様子を見た後、斜面を降り歩きながら足跡を追っていきます。
はっきりした足跡。蹴りだした土。
通いを横切る枝には、鹿の毛が付いています。

走り高跳びのバーのようになった、ひざの高さにある横枝にも。
この真横に伸びた枝を飛び越えると、今度は頭が上の枝につっかえるような場所も、淀みなく走り去っていったのが、不思議でしょうがない。

さすが鹿。
猟場で歩いていると、人間からするとほぼ崖、そんな急斜面の10㎝幅のところでも、足跡が付いている。本当に驚きです。

今日は、3時間のみ。
鹿をびっくりさせたということと、久しぶりに聞いた声が嬉しかったので、良しということに。

でも、手ぶらで帰るのは、口惜しいので、
きくらげを一山とってから帰宅しました:)。

キクラゲ
いつの間にか雨も止んで

3月大雨の渉猟

3月に入り気温も上がり、雨が多くなってきました。
この日は、前夜から雨。日が昇ったら大雨に。
予報では昼から雨が上がるとのことでしたが、見たところでは雲も厚く、まだまだ降りそう。

さて、こんな大雨で動物はどこにいて何をしてるだろうか?

知りたくて、鉄砲とリュックを担いで、山へ入りました。
杉山のわきにある、広葉樹が頂上までつづく小高い山。
そこなら、なんとか1匹くらい、雨に打たれている鹿や猪を見つけられるのではないかという淡い期待をもちつつ、アイゼンを履いて慎重に上りました。

朝8時の時点で、1m幅の沢の水が普段の4倍ほどになっています。足首から脛まで水につかるくらい。

雨が枯葉や木々を叩く音で、まったく動物の足音や動く音は聞き取れません。
気温も10度以上あるようで、中腹から上は霧模様です。

霧が広がる薄明かりを目を凝らして、止まってはぐるり、
止まってはぐるりと、何の動きや見慣れないものを探します。

シダが生えるところと木々生えているの境目あたり。
椎の巨木や倒木の向こう。灌木の合間につづく通いの先。
じっーとしてみたり、しゃがんで見てみたり。
時折、樹冠の上の方が、突風でゴーッと揺れていきます。

銃は機関部ができるだけ濡れないように右側を下にして、進みます。

今日は、三時間の山歩きでした。
何も動くものは、鳥以外見つけられず。
動かないものでは、ハナビラニカワダケとキクラゲをポケットに入れて。

帰りの沢は、更に水かさと音が増して、なかなかの迫力でした。

春の山に響く、謎の声の主は?

2月末から急に暖かいいが続いて、山の中でも昼間はかなり気温が上がりました。
すると、どこからともなく変な声が聞こえてきます。

猪の「ブーブー、ごっ」という野太い声ともちょっと違う。
小さい鳥たちの歌声でもない。
サラサラ、ちょろちょろ流れる沢の音とも違う。

でも確かに、谷や沢から聞こえてきます。
岩や窪みに反響しながら、ちょっと野性味あふれていて、かつ少し繊細な感じで。

タゴガエルでした。


20180301

ハナビラニカワタケ、きくらげ、玉きくらげと栄養成分

2月末から3月に入って、ぐっと暖かくなりました。
山に入っても、どんこ以外には、なかなか大きい猪や鹿に会わないし、昨夜は雨で今朝から気温もさらに上がったので、何かキノコはないかと探し始めた途端に…。

まず、きくらげが生えた木が、目の前に二本も現れる!

キクラゲ2本
なかなかのきくらげです。

きくらげは、幼稚園に上がる前から祖母と一緒に採っていたなじみ深いキノコです。

 

 

 

 

 

 

調子に乗って探していると、今度はちょっと上の方に..。それからちょっと歩くと、次は目の高さに。その上を見上げると更に!

はなびらにかわだけ
びろびろした塊が。
はなびらにかわだけ2
いい調子で見つかります。
はなびらにかわだけ3
別の木の上の方にも。その更に上にも。

 

 

 

 

 

 

 

 

きくらげは、乾燥した状態でどんぶり山盛り一杯くらい。はなびらにかわだけは、ちょっと古いものもありましたが、両の掌にいっぱいにとれました。

たまきくらげは、落ちていた枯れ枝に、ひとつまみ程ついていました(笑)。

キクラゲどんぶり一杯
どんぶり山盛り一杯
はなびらにかわだけ4
こちらは両手にのるくらい。

 

 

 

 

 

ちなみに、ヒメキクラゲもよく見かけます。

しかも、長崎ちゃんぽんリンガーハットさんの調べによると、キクラゲ(多分その仲間も)は、食物繊維がキャベツの約8倍、鉄分もシイタケの約8倍。ビタミンDはイワシの約6倍、カルシウムはタケノコの約2倍らしい。タケノコにカルシウムが含まれていたとは!
(いつもありがとうございます。長崎ちゃんぽんさん:

ひめきくらげ
小さい枯れ枝にも
ヒメキクラゲ2
見た感じは今一つです。でも触感が面白い。
キクラゲの栄養成分
キクラゲは、なかなか良いらしい:)。

 

 

 

 

 

20180301

34日目(鹿が猪に)

34日目
・ゴルゴ13の偉大さをあらためて知る。
・鹿が猪に替わった話。
・山が一番、足は2番、犬はなし。

◇今日は、あらためて、ゴルゴ13の凄さを知りました。

2つの猟場では、4~5時間歩いても
鹿も猪も2週間ほど姿を見ないため、新しい猟場を試してみました。

朝から曇天で、いつになく気温が高く、風もない。

使われていない段々畑を降りて、小川を超えて低山が奥へ連なるような場所。
小川を超えて対岸に入ると、猪の食み跡あり。
20mほど登ると、1m幅の小道があり、やはり猪の食み跡が所々に。
新しい鹿の糞も多い。

小道は、尾根をぐるりと回って、枝尾根を越えながら、少しずつ登っていきます。
数歩歩いては、あたりを伺いながら、ゆっくり進みます。

別の尾根を回り、10mすぎたところ。
谷向こうの尾根の斜面。距離約15m。
3m視線をあげたところに、40㎏くらいの雌鹿が不意に右から歩いてきました!

鹿と私の間には、谷を挟んで、灌木がある。
とくに目の前には5~6本に分かれた樫の木があって、
ちょうどその向こうに鹿が入ってきたのです。

「棒立ちの鹿を見つける」

ここ2週間の目標が、こんなところで達成されるとは。
(我慢して、歩いてきてよかった)
心臓は、早く、強く打ち、銃が揺れそうに感じるくらいです。

足場は、幅20㎝くらいで、40度を超える急斜面。
音を立てずに、なんとか左足を10㎝ほど鹿に向け、
腰をひねりながら、ゆっくり挙銃します。

5秒すぎ、10秒過ぎ…。

やっと、鹿が樫の木の右側に体半分出して、
向こうを向いて腰の高さにある草を食べ出す。

狙うのは、首の下の方。
(首の上の方は外しそうだし、体に傷はつけたくない)

期待と興奮で、心臓は相変わらず
ドドドドドドドドドと連打中。

ドーン!

鹿は、左へ走る(弾は外れた)。
足場も悪く、また、すでに腰を左にひねっているため、これ以上左へは撃てない。
くっーと思って、鹿を目で追う。

10mほど左へ走った鹿は、なぜか尻だけ見せて、枝尾根の向こうで止まった。
足を止め、じっと音を立てずに、隠れているつもりのよう。

「ラッキー!」と欲に駆られて、向こうの谷へぐるっとダッシュ。
(ここで走らずに、またゆっくり進めば良かったのに…)

どたどた走るもんだから、当然鹿もこちらに気が付き、跳ねる。走る。
向こうの谷に着いた時には、鹿は30m先の急斜面を駆け上がり、頂上へでるところ。
こちらは、そんな急斜面は、走れない。

また、やってしまった…。
貧すれば鈍す。獲れない猟師は、駄目ですね。

◇でも今回は、ここからが違う。
反省して冷静になる。

撃たれてもすぐに止まった鹿なら、またすぐに止まるかも。
ということで、鹿の通った後を追わず、急斜面の枝尾根をぐるっと迂回して向こう側から頂上へ向けて追うことに。

30分以上かけて、ゆっくり音を殺して進む。距離にして300m程。
尾根に上がったところで、膝くらいまでの草が茂る30㎝幅の小道があった。

そこには、20㎝幅の通いがある。
鹿の新しい糞も。

この小道を左に下るか、右に登るか。

右を選ぶ。
ゆっくり、静かに。
十分に時間を使って。

鹿が上がってきたところに出る。
山は、左右の尾根と奥の斜面に分かれる。
奥の上り斜面に向かって数歩進むと、下草の間に30㎝のすべった足跡があった。

鹿の焦りようが伝わってくる。
爪跡の先は、奥の斜面へ向いている。

尾根筋を超えて、その斜面側へ入った途端、
鹿が15m先の藪の中をバタバタ走る音が(姿は全く見えず)。
やっぱり、まだ近くにいる。

膝をついて、灌木の間から音のする方に目をやるも、
見えるのは椎や榊の低木、枯れ草がところどころに覗くくらい。

でも我慢。

膝をついたまま、音を聞いていると、今度は、左上の尾根からガサッ。
ガサ、ガサッ。
距離は、20mもない。

姿は見えず。
音が尾根沿いに下りてくる。

見えた!
ほんの一瞬、黒い影が。

こちらに気づかず、鼻で何かを探しながら、
止まっては進み、下りてくる。

今度は、もっと我慢。
銃をギリギリまで上げない。

10m。
まだ灌木や草が邪魔で、姿は見えない。

6m、足から上の体がすべて見えた。
銃を上げ、首に狙いをつける。

「あっ、くそッ」
灌木の後ろに入った。

狙いはそのまま。
ガサ、ガサッ。出てきた。

5m、もう目の前。
こちらに気づいて、目が合う。

鼻先を左に向けた瞬間、ドーン!

今度は命中。倒れて、足をバタバタさせながら下に落ちてくる。
50kgを超えるオスの猪。

とれたのは外した鹿のお陰。

ーーーーーー

追記:
単独での忍び猟・渉猟で一番大事なのは、動物の陰の濃い山を選ぶことだと思う。

当たり前のようだけれど、足が強くても、いい犬がいても、
どんないい銃があっても、獲物が少ない場所では出会うのが大変だというのが実感です。
足も弱いし、犬もいない自分のような初心者の方には特に。

いい山とは、小さい枝尾根が多い山。獲物との出会う機会が多いから。
高くても300mくらいまでが理想的。
餌が多い。椎や樫が生え、場所によって下草もある。

天気は、雨の後。風は弱め、曇天。無風なら快晴も。

獲物の引き出しのことも考えると、
なんとか1~2時間くらいで山から下せそうな距離の猟場がいい。

特に単独猟では、山からとった獲物を一人で引き出すところが、獲る次に大変な作業となるので。

20180215

22日目

いつもの猟場に猪も鹿も姿を見ないため、ここ数日、場所を変える。
(轍の後を見ると、土日に犬を連れて他の猟師さんが入っている可能性もあり)

真ん中に深い谷がある立派な杉山が連なっている。
300mを超えてから、約480mまでシダや広葉樹が広がる。
傾斜は平均45度ほど。頂上への100mほどは50度を超えるか。

連日山に入っているため、傾斜を下っていく際、
古傷の左足首の痛みが強くなってきている。

谷の左側の雑木林から上に向かう。
尾根を遠回りして、前日にみた鹿がいた400m地点へ、更に上の尾根から降りていきたい。

小一時間ほど斜め上に歩いたら、直角に登る。
350mくらいから腰まであるシダが群生している。
急斜面で、シダに隠れて杉の湿った枝が落ちているため、時折足を滑らせながら、ゆっくりと登る。

400mを過ぎたところで、縦横10mを超える石があり、
そこから尾根が頂上まで伸びている。
ちょうどその石の上に、樫の木が生えている。

右下から石を回り、その樫の木まで登る。
ちょっと樫の木の下で、休憩してから。
と思ったが、そのまま一気に頂上を目指して歩き始めた瞬間に、

ピーッ!

鋭い鹿の警戒音がして、2頭が30m先の灌木の間を駆け上がる。
息を切らしながら、銃口で追うも、白いお尻が跳ねながら上がっていくのを見送る。

次の瞬間、

ピー、ピー。
二頭が新たに声を上げる。
なんと逃げた2頭の上に4頭の群れがいた。

尾根を駆け上がりながら、2頭と4頭の群れを追う。
上はまだまだ安土がある。
50m以上離されてはいるが、後ろ姿が確認できる。

走ルノをやめると同時に、狙いをつけ、
立射でドーンと一発…。

ん~、当たらない。
もしかしたら、3発連続して撃つことも出来たかもしれないが、
やはり灌木が邪魔で、3頭全部は一度に姿を確認できなかった。
また、走ってすぐ、しかも不安定な足場での立射はまだまだ命中度が低いため、断念。

練習不足。
こんな状況で、命中度が上がってくれば、猟の成果も良くなってくるだろう。
猪に比べて、距離を詰めるのが難しい鹿対策としても、猟期が終わったら射撃場で訓練が必要だと実感。

ここが、この日のハイライト。
尾根沿いは、猪の食み跡も多く、日当たりもいい。
けれど、前の猟場に比べると数が少ない。
もっと、いろんな山を歩いていい猟場をみつけねば!

20180131

21日目

さすがに毎日いつもの猟場では限界がある。

初日から二週間は、良く猪や鹿に出会う。
でもそこから出会いの数が急減していきます。

そこで、今日は昼前から、昔から地元の人たちが猟に使っている谷へ。
初めて行く場所なので、携帯の地図&GPSソフトを早めに起動しておく。

沢沿いの道を上がった後、なだらかに左右に曲がる林道を登ること40分。
山が高くなるについて、沢が深い谷になっていく。
V字の谷、両側30m。

麓から高さ150mくらいまでは、高い杉の林。
200~300mの高さは、広葉樹の高さ3mほどの細い灌木がそれに加わる。
谷に沿って上がっていくと、バキッと大きな音がした。

パキ、パキッ。

鹿がいる。谷の下の方から音がする。
50m前からも、枝が踏みつけられる音が。そして数分後には50m後ろから、こぶし大の石がゴロゴロ落ちていく音まで。

3匹?

落ち葉や杉の枝が足元には積もっている。前には50㎝~1mの高さの木々が枝を広げていて、前にも後ろにも動けず。
音がする度、前や後ろ、そして横を睨む。

けれども、谷は深く、水の流れる底は見えない。しかも日光がこちらへ向けて差しているため、逆光で見ている方は暗く、音だけが頼り。

辛抱、辛抱。

でも15分が限界でした。
前方の大きい音は、だんだん遠ざかる。
横と後ろの音は、たまに小さくパキッとするくらい。

横と後ろの音は気のせい?
(そんな訳はないんだけど、辛くなると好きなように考えてしまうのね)

思い切って、前の音を追うことに決める。
音は最小限にしているつもりでも、枯葉や枝を踏む音は出る。
5歩も進まないうちに、

ピー!

谷川を挟んで、真横で鹿が鳴いた。
でもいくら薄暗い谷を睨んでも、周りを見ても何も動かない。

(後日、山をもっと歩き出して分かったのだけれど、深い谷のせいで、その上や反対側にいた鹿の鳴き音が響いていたようです。)

仕方がないから、まっすぐ頂上を目指して、下草や3m前後の灌木を避けながら、高い杉山を登っていく。

途中、谷へ降りる所があったので、さっきの鹿を探してみる。
確かに足跡はある。

「でも、ほんとにこのV字の谷を登っていったのか?」
というくらい急斜面、というか壁に近い。

何とか足場になりそうな岩があるところを探して、落ちないようにその壁をよじ登る。

斜面に生える木を片手で掴み、石のそばに足を置いて一気上がろうとすると、

ゴトッ。ガラゴロ、ゴトッ。

50㎝くらいの大きな石を足で蹴落としてしまう。
ふっ~と息を吐いて、谷から右の山側へ出る。

灌木が濃くなるにつれて、猪の掘った穴や鹿の糞、足跡も濃くなっていく。
そのまま登っていくと、灌木の隙間から網が見える。

8合目あたりに鹿よけの網がしてあり、そこから上は2mほどの杉が植えてある。
その上には広葉樹の木々が見える。
右に行くと、なんと林道があり、左に行くと網が続く。

左へ行き、谷の上部を越えて向こう側へいくことにした。
そこから、少し下りながら奥へと進む。

山の斜面、尾根にも谷にも、立派な杉が見渡す限りに広がっている。
頂上部分に木や広葉樹が、僅かに見える。

尾根が一つ一つ谷で区切られ、杉林で上まで見通せる。
犬を使って、鹿や猪を上から追い出し下から撃つ、巻き狩りには絶好の場所。

でも、忍び猟には最悪でした。
150mも離れたところから、簡単に鹿に鳴かれてしまう。

ピー。
見通しもいいから、声もよく通ること。

小型のメス、2頭。可愛らしい白い尻が、上へ懸命に走っていく。
鹿がいた高さまで登ろうと、右手に進路を変えて進むこと2分。

ピー。

今度は4頭。頂上付近を、米粒くらいのメスが右から左へ、灌木や岩に出たり隠れたりしながら、バタバタ跳ねながら走っていく。

米粒の大きさだけど、銃口で追いつつ、3度目に姿が見えれば撃とうと思っていると、3度目は無し。岩の後ろへ行ってしまった。

口惜しいので、やっぱり鹿がいたところまでそのまま登る。
大きな岩を超えると両側の谷を見渡せる場所で、15分じっとして待つ。

フードを被っても、ときどき吹き抜ける風が冷たい。
もう駄目。性格的にも、じっとしていられない…。

一番大きな谷を中心に、大きく弧を描くように元来た場所へ降りていく。

尾根を越える毎に、沢がある。
杉の丸太の一本橋が掛かっている。しかも半分、いや三割腐りかけ。

長さ3m。微妙な距離。

一歩足を進めると、パキ。メキッ。
折れたら、下のあの岩へ飛び移ろうと考えながら、また一歩進む。
半分まで来たら、もう一気に走る。つもりで、急ぎ足。

いや~、折れないでよかった。ほんとに。

もう斜面を大きな足音を立てながら、斜めに歩いていく。
どんどん下る。

 

攻め方を変えれば、確かにここはいい場所かも。
一番端の尾根から頂上まで上がり、横へ移動していけば、もしかしたら、灌木の間から鹿は撃てるかも。ただし、先に鹿に見つからなけれの話だけど。

今日は、4時間半。ちょっと緊張した。
平均斜度45度。
ときどき、杉の枯れ枝や落ち葉に隠れた穴にすぽっと落ちる。
それでも、杉林は降りやすい。登りやすい。

20180126

19、20日目

19日目
快晴。
登ると風が強い。7~8m/sはある。

今日初めて、鹿のほやほやの糞を見つけた。
その鹿をみることはできなかったけど、足音だけ。

狸のフンに形は似て、大きさはそのちょうど半分くらいの新鮮なやつも。
やっぱり姿は見れず。

尾根や頂上では、昼になっても霜柱が元気で立っている。
谷から吹き上がる風も、時折吹いてくる横からの風も冷たい。
山に8時間半。

次の山は30分の下見。
さぁ、明日は1時間早出で行こう!
20180125

20日目
今日も快晴、頂上付近は10mを超す風。
昨日とほぼ同じコース。

途中は、山の頂上を避けて、八合目あたりの鹿の通いを追う。

けれども、風が葉や木々を揺さぶる音で、動物の動きは全く掴めず。
姿も見ず。

唯一、動物が動く音を聞いたのは、
周回の3/4を過ぎた下りの尾根に15分ほど潜んだ時。

20m先の尾根向こうから、ガサッ、ガサッと音が上がってくる。
大木の根元に潜んでいたが、足元は枯葉と枯れ枝が幾重にも重なっている。
動けば、すぐにバレる。近づきたいのをじっと堪えて、こちら側へ来てくれるのを待つ。

哀しい哉。音は向こう側へ遠ざかっていく。
しびれを切らして、出来るだけ音を立てないように足の裏全体でゆっくり上から落ち葉や小枝を踏みつつ忍ぶ。
体は飛び出した葉っぱや枝に触れないように右に左に下に。

やっとたどり着いた尾根からは、動くものは何も捉えることはできず。
ほんの15秒前にはいたばずなのに…。

耳が冷たい。鼻は出っ放し。
それでも、山は気持ちがいい。
20180125