18日目(雨と雪と霧)

東京は大雪の予報。

ちょうど一番奥から2番目の沢へ入り、
頂上の尾根の道へ向かって2時間たったころ
小雨がぱらついてきたと思っていたら、雪に。
そして、段々ぼた雪、霙になり強くなってきた。

雪の中の狩り
雪が降ってきました。

雨や雪になれば、動物たちも油断して絶好の猟日和かと思いきや、
雨と雪が落ち葉をたたく音で、まったく動物の動きが分からない。
また、靄もでてきて10~20mより先は、視覚にも頼れない。

湿って踏んでも音が小さくなった
落ち葉や小枝をゆっくり踏みながら、とくかく歩くと決める。
時折、動物たちの音を探すが、耳と目で確認できるのは、キジバトやシジュウカラくらい。

霙(みぞれ)に近いぼた雪がだんだん強くなっていく中、
防水の手袋ゲーター登山靴、皮のジャケット(+インナー3枚)、猟友会のベストとオレンジのニット帽で、水濡れと寒さは大丈夫だったので、大木の横や岩場の下で止まり、時には5分ほどあたりをしばらく伺いつつ、また進むも何も動かず。鳴かず。

8時~2時まで6時間、1頭の鹿も猪もリスも野うさぎも猿も見ずに終わる。

雨と雪の日の動物の動きを知りたくて、
どきどきしながら谷から尾根、尾根から谷へと何度も渡るも、いつもの猟場では成果なし。

せっかくいい機会。
もったいないので、車で15分ほど移動して、別の大きめの沢のあたりへ。
15分ほど、沢沿いを上ったとき、

ブーッ。と小さい声が右手から。
振り向くと、ウリ坊から縞がやっと消えたくらいの仔猪が二匹逃げ出していく。

一瞬で銃を構えて、後ろの仔猪へ狙いをつけつつ、引き金を引く。

ウッ。

安全子が、そのまま。
「うわっ、やっちまった」と思いつつ、
安全子を人差し指で押して、灌木の奥へ逃げるところへ一発…。

はずれ。
最初の狙い通りなら、確実に当たったのに!

沢沿いの小道から走って後を20m追うも、灌木の向こうで見失う。
強い霙のため、音も拾えず。

口惜しいけど、親も近くにいるかもと自分をなだめて
沢沿いの小道に戻り、20分登る。

沢を流れる水の音、霙の音が続く。
先ほどの仔猪の食んだ跡なのか、新しい食み跡が5か所あった。
濡れた落ち葉で、足跡は見つけられず。

小道は、崩れてきた5~60㎝の石で塞がれていたり、
急斜面になって道がなくなったりしながら、沢を二つ越えて、まだ続く。

急斜面を登ったところで、進むのをやめて、右斜面へ上る。
そのまま登りつつ、来た道の30mほど上の通いを通ってきた方向へ戻ることに。

帰り際に、上で逃がした仔猪と出会わないかな~、なんて思いながら。
小一時間ほどかけて戻るも、成果なし。

雨、雪、霙。
動物に気づかれず良いかと思っていました。けれど、人間に不利でした。
でも、徳島南部用の装備は正解。ちょっと安心しました。

20180122

皮なめし(鹿編)

一日目
マダニ対策のため、野外で保冷剤を入れたバケツに入れておいた鹿の皮を水洗いします。
たらいにつけて、流水で10分ほど。
よごれやダニと毛などもしっかりと洗い落します。

長靴、手首まであるぴったりするビニール手袋、長袖長ズボン、スパッツや靴下でズボンと足に隙間ができないようにして下さい。

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SFTS
日本紅斑熱予防に、作業中はもちろん、作業後もマダニには注意が必要です。山に入ったり、農作業後、二週間以内に、38度以上の熱や水様性の下痢の時、かゆみのない赤い斑点が体に出たときには、すぐに病院へ。犬や猫に噛まれた後でも、SFTSに感染した例が出ています。
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鹿皮そうじする前
鹿皮そうじする前

肉の5㎜ほどの層がついたままになっています。
これをこそぎ落としていきます。
鹿の皮はしっかりしていて、肉も剥げやすいので皮はぎナイフなど、あまり切れすぎないナイフであれば、ナイフと皮の角度は30~45度くらいで、少し強めにナイフを当てても、皮が切れることなく肉が取れていきます。

竹や丸太、台車の持ち手の鉄パイプ部分などにぶら下げてやるとスムーズにできます。

鹿皮なめし作業中
近くから見ると
鹿皮なめし
鹿皮そうじ後全体

まだ、端のところの脂、白や透明のスジっぽいところが残っているので、翌日の仕上げ前に再度きれいにします。
保冷剤を入れたバケツへ戻し、蓋をしておきます。(最低気温は5度、最高気温は12度)

 

二日目
仕上げで、端の脂や全体のスジを取り除きます。そして再度、流水で水洗い。
このとき毛の部分だけ、シャンプーや石鹸で洗ってもOKです。

木の棒などに掛けて、陰干し2~3時間ほど。

鹿革なめし干し上
鹿皮影干し

鹿皮なめし干し

 

 

 

 

 

毛の部分が乾いてきたら、新聞紙4枚重ねの上に、鹿皮を乗せて皮の内面に生ミョウバンをまんべんなく擦り付けます。

鹿皮なめしにミョウバン
生ミョウバンを擦りつけた後
鹿皮なめし生ミョウバン
すでに新聞に水が…

 

 

 

 

 

生ミョウバンをまんべんなく擦り付けたら、新聞紙を4枚重ねて、くるくると巻く。ゴミ袋に突っ込んで、10日程保管します。

鹿皮なめし新聞紙に挟む
鹿皮を新聞紙でサンドイッチ
鹿皮なめし新聞紙ロール
鹿革を挟んだ新聞紙をくるくる

 

 

 

 

 

猪の皮なめしの時は、3時間ほど乾かしてから、粉の生ミョウバンを擦りつけたのですが、手洗いした後10分ほどでタオルで毛皮を拭いて、すぐにミョウバンを擦りつけました。
そのため、猪のときはカサカサな感じだったのに比べて、今回は水気が多く、しっとりとミョウバンは馴染みましたが、一方で新聞に水分が浸みてくるほどでした。さぁ、どうなるか?

四日目
やはり水分が出てきて、新聞紙の下半分が濡れてきおたので、新聞追加(6枚)して上から巻く。

七日目
時々、鹿皮を包んである新聞紙をひっくり返す。水分がまだ出てきているので、今度は新聞紙を新しくして巻きなおす。カビもなく順調のようです。

十二日目
いよいよ新聞紙を外します。ミョウバンは粉状のままで、鹿皮も柔らかい。

鹿皮なめし開く
新聞を開いてみると
鹿皮なめし接写
ミョウバンを取り、近くで見ると

全体のミョウバンをナイフの背で払うように取り、皮から少し飛び出している膜、脂や身を切り取り、ざっと表面を整えました。

 

 

鹿皮なめしミョウバン取る
まず台に乗せミョウバンを取る
皮なめしミョウバン良くとる
鉄の棒に下げて削った後

台車の押手の鉄の棒にぶら下げてらにナイフの背で、丁寧に削り取ります。
その後、皮を全体的に伸ばして、皮が硬い部分に、生ミョウバンを水に溶かしたものを再度塗り込みます。

 

鹿皮なめし再度巻く
新しい新聞紙で巻く

新しい新聞紙で巻き、1週間ほど様子を見ます。

 

 

 

 

鹿皮内側
鹿皮をゴリゴリ伸ばす

すっかり鹿革のことを忘れていました!
10日以上たって、出してみると少しカビが出ている場所あり。急いでカビの部分やミョウバンを削り取り、テーブルの縁に当てて、ゴリゴリ伸ばします。足の先や皮の縁が硬くなっているので、特にゴリゴリ。強めに両方から引っ張りながら、上下に伸ばします。

 

鹿皮テーブル
なかなか柔らかい

テーブルの端に置いてみると、ぐにゃとなるくらい柔らかいのが分かるでしょうか。皮全体の縁の部分は、あまりミョウバンが効いていないためか少し硬い。足も含め、全体的に丸くして揉んだり、テーブルの丸い角に当てて、30分ほど強く伸ばしました。

気になったのは、やはり脂。皮の縁には、脂がそのまま。それほど多くはないですが、ナイフで切り取りました。

脂はカビやにおいの元になるので、やはり最初の段階で丁寧に取り除いておくとよいかもしれません。

それから、まだ内側が湿っているので、乾かします。

鹿皮釘付け
伸ばして、しっかりと釘づけします。

なかなか上手く行きませんが、できるだけ全体を伸ばして板に釘付けて乾かします。急激に縮まないように、陰干しで。
乾いて硬ければ、皮の内側に湿った布を当ててしばらく巻いた後、また柔らかくする作業を(繰り返)します。ヤスリをかけ整えたら出来上がりです。猪と違って毛もつやつやで多く、柔らかい。やっぱり、皮は鹿のほうがいいですね。

 

17日目(初めての鹿)

予報通り、朝から雨。
思っていたより強い雨のため、午前中の出猟は取りやめ。

12:00を前にして雨が止み、気温15度を超える。
太陽も顔を出して、明るくなってきた。

急いで昼食を済ませ、12:30には猟場へ到着する。
いつもの林道の一番奥から、沢の右側斜面へ向かうことにする。

沢の手前で、足元を見ると、なんと沢ガニを発見!
急な暖かさと雨で、春と思ったのか。
今日は、空気がぬるい。

沢の音も、いつになく大きい。
右の斜面を登り、時折、斜面を平行に進む鹿の通いを
通りつつ尾根を越え、反対の斜面から頂上を目指すことに。

ふと見上げると、かつては杉を出すときに使ったのか
幅50cmほどの古い道がある。
そこを通って、谷を八分目まで一気に上がる。

斜面にある通いには、1cm を超える鹿の糞が落ちている。

あとの二分は、シダの中にある僅かな獣道を慎重に上る。
雨の後のため、落ちている杉の枝や石をシダの中で踏むと滑る。

森は静か。
気温が上がっているので、霧も少し出てきた。

雨が上がったばかりなので、足跡は崩れほとんど判別不能だが、
いつもの猟場だし、こちらの足音も響かない方がいい。

霧から、靄(もや)に変わってきた。
動物が油断してくれるといいけど。

いつもの尾根の周回コース。
尾根近くにくると、上で風が鳴っている。
ゆっくり、尾根の左右に注意しながら、尾根にあがる。

静がでしっとりとした雰囲気。
南側から吹き上げる風のおかげで、足音が更に消される。
いつもは3~5mくらいに近づいた時に飛び立つ鳥も、
真下を過ぎて、やっと慌てて飛び上がるほど。

木漏れ日で、足音が明るくなってきた。
午後からの猟は、いつも動物と会う機会がぐっと減るけど、
午前の強い雨、そして雨の直後は、どんな動きをしているか。

◇尾根をゆっくり歩くこと小一時間。
動物がいそうな雰囲気は、すごくあるんだけど。

谷に入ってから3時間ほど経っても、
一向に足音も声もせず、姿も見えず…。
ただ、松の香りが強く漂っているだけ。

普段なら、ここからの下りの尾根は1時間ほどで降りてしまう。

立ち止まって、水を一飲み。
息を吐いて、下りへ向かう。

「滑らないようにせんとな」

急斜面を音を立てずに降りるのは、本当に難しい。
それでも濡れた落ち葉のおかげで、いつもの半分の大きさしかない。

パラパラと小雨が葉っぱを叩き出した。
森は少し暗くなってくる。

見上げると、雲はまだ薄く明るいが、雲の流れが早い。
「本降りになる前に下まで降りるか」

ここの下りは、細い灌木が多く、左右も下も見通しがきかない。
灌木の間に下りの道を探りながら、早足で降りていく。

突然5m下、左の灌木影から、全速力の鹿の群れが左から右へ抜ける。
1頭目は、一瞬で右の灌木に消えた。

考える間もなく、2頭目を撃つ。

激しく走る鹿と大きな足音。
そして、倒れる姿を右下に見ながら、
続けて3頭目、4頭目へも連射する。

急斜面で、どうやって態勢を保ったのかも分からないほど。
当たったのは、一発目。
弾は、首の後ろの背中から、反対側の下っ腹へ抜けていた。

この17日間、すべて先に鹿に気づかれた。
今日は、雨のおかげ。

20180118

皮なめし(猪編)

皮なめし

作業一日目

1頭目の猪。後で何か作ろうと、皮をなめしておくことにしました。
解体した後に、冷蔵庫に保存していた毛皮を出して、皮をなめすために下準備を始めます。マダニ対策と水濡れ防止に、長靴、ぴったりして手首まであるゴム手袋、長袖長ズボンで作業をします。

1.樽に水を張り、ゴム手をして中庭でゴリゴリと10分水洗い。

2.次は、毛皮を上にして2時間干す。

皮なめし
皮を水洗いして干す
皮なめし
上から見ると…

 

 

 

 

 

3.台の上に裏返して、余分な脂肪や肉を丁寧に取り除く。

(解体時は、初めての解体だったのと、アジ捌き用出刃包丁一本でやっていたので、厚さ1cmの脂がついているとことも多くありました)

3時間かけて、また小出刃で端から端までゆっくり丁寧に。
2時間半後、皮ハギ用のナイフを黒猫さんが届けてくれました。
皮についた脂を削いで、削いで。
でも、皮が薄いお腹の部分や足などの端の部分では、切れの良いナイフで皮を切らないように注意が必要です。

皮なめし裏面
皮なめし裏面
皮はぎナイフ
皮はぎナイフ

今日の作業は終了。
大きいビニール袋に2重にくるんで、再び冷蔵庫へ。
この皮はぎナイフは、全長27cm、刃の部分だけでも15.5㎝。鹿にはちょうどいいですが、猪のなめし作業には、半分くらいの大きさの方がもっと使いやすそうです。

特に猪は脂がのっているので、皮をはいだ後も脂を取り除く作業に手間がかかります。皮を破くのが心配な方は、切れ味の良いナイフを使い、皮と脂を表裏から指で挟んで、脂の部分をまず切り取ってから(手を切らないように注意して)、平らな板の上で、皮ハギナイフを使い、ゴリゴリ脂を削っていくとよいかもしれません。

作業二日目
1.冷蔵庫から出して、2度目の水洗い。
今度はシャワーで表を5分、裏を1分もみ洗い。

皮はぎ2日目
皮はぎ脂取り2回目

2.平面の上に皮を置き、裏面に残った脂を皮はぎナイフでガリガリと削っていきます。脂が厚いところはナイフを立てて、脂が薄いところや皮が薄いところは、ナイフを寝せて慎重に削ります。
(104gの脂が取れました)

3.新聞紙を3重にして皮をのせ、生ミョウバンを表面にこすりつける。
特に耳の周り(軟骨)、鼻の中、穴が開いている部分や端の部分は、特に丁寧に擦り付けていきます。端の部分は、皮をはいだ時に内側に湾曲してしまいますが、生ミョウバンの粉がつけばきれいに広がります。仔猪のため、使ったミョウバンの量は、500g。

皮なめし2日目
生ミョウバンを擦りつける

 

 

 

 

 

4.皮の上にも新聞紙を3重にして、上下で挟みぐるぐると巻いていきま

新聞紙で巻く
新聞紙で巻く

す。このまま10日間ほど、ビニールに入れ、口は閉じずに部屋の中で保存します。
ここで気になるのは、耳と鼻。耳の中には軟骨が残っており、鼻の外側は、鼻そのまま(内側の肉は取り除いています)。ミョウバンはたっぷり塗り込んだものの、乾いた後にどうなるか。

 

猪の皮は、毛皮というよりは皮膚という感じです。地方によっては、猪に湯をかけて毛を抜き、皮ごと食べるというのが分かった気がします。豚の元だから、当然ですね。
皮なめしの下準備としては、皮に脂が多く残っている場合には、皮と脂の境目が分かりづらいため、切れるナイフで脂を薄く切っていくのも良いかと思います。皮に薄くしか脂が残っていないときは、こそいでいくと皮を切らずに、作業も早く終わります。

5.11日目にして、恐る恐る開いてみます。

開けてみると、新聞紙に巻いたときとあまり変わらないような…。
ミョウバンはつけすぎてました。内側のカサカサの部分に、そのまま残っています。
指で削り取っていくと、中には脂がまたたっぷりそのままでした!

猪皮湿り気
湿気が浸みだしています。
猪皮中はカサカサ
内側はカサカサ
猪皮脂がまだすごい
脂がまだたっぷり

 

 

 

 

 

そこで、皮はぎナイフの背の部分を使って、荷台の手すり部分に皮をぶら下げて、ゴリゴリ脂を削っていきます(刃の部分で慎重にやっても、皮が薄く締まってきているため、すぐに切れてしまいます)。
脂の下にある皮の部分には、ミョウバンが効いているようで、ごわごわの皮らしくなってきています。

猪皮また脂をとる
再度脂をとります。
猪皮赤カビも
赤カビや黄色のカビの斑点も

100gくらいは脂が削り取れたのではないでしょうか。
皮が締まっているため、強めにやっても大丈夫でした。

 

 

猪皮もう一度脂取り
脂取りの後(全体)
猪皮もう一度脂取り接写
脂でテカテカ(接写)

脂をこそいだ後に、生ミョウバンと塩一掴みずつを水で溶いて、ざらざらにしてから、塗り付けていきます(塩は匂い取りと防腐剤として使用しました)。

 

猪皮ミョウバンと塩
生ミョウバンと塩を塗り直し

今回は、水で溶いたものを全体にこすりつけた後は、生ミョウバンのみを上から、更に擦り付けていきます。全体がしっとりと馴染んでいます。

そして、皮の表裏に新聞紙を三重ずつにして巻き直して、部屋の中であと10日間ほど保管します。

 

 

6. 三度、新聞紙を開きます。

猪皮なめし
更に10日後
猪皮なめし
ナイフの背でミョウバンと脂を削り取る。

全体をナイフの裏側で擦り、ミョウバンを削り取ります。
ここでも、まだ猪の脂が一緒に取れます。

 

 

やはり、如何にこの脂をぎりぎりまで、取り除いておくかが、良い猪皮なめしの鍵になりそうです。

猪皮なめし
台車の押し手にぶら下げて、削ります。
猪皮なめし
背骨の上あたりの皮

日向でやっていると、脂が解けて滲んでくるところもあるほどです。さすが猪の脂ですね。端の部分の脂が数ミリある部分や全体も木づちで叩いて、脂を潰したあとナイフで削り取りました。

 

猪皮なめし
木枠に釘で打ち付ける

猪皮なめし

全体的にミョウバンや脂を取り除いたら、木の枠に打ち付けます。できるだけ張った状態をつくります。

 

 

今回は、脂が出ている部分を中心に、再度生ミョウバンを水で溶かして塗り付けました。そして、木枠を日陰で干します。

猪皮なめし二日目
陰干し二日目

翌日には、全体的に白くなり、硬くなっています。
脂も乾燥してきてあまり目立ちませんが、よく見ると脂がそのままの状態で残っている部分もあるようです。腐敗防止のため後で取り除く必要がありそうです。

 

 

油を塗る
3日目にしてぐっと皮が縮んできたので、ひまわり油を塗って少し伸ばしました。

猪皮なめし油塗り
全体に油を塗る
猪皮なめし油塗
近くで見るとこんな感じです。

数日たつと少し皮がこなれてきて、ゴワゴワながら、やや柔らかくなりました。

 

 

 

しかし、毛の間にミョウバンの粉がたくさんついているので、流水で洗うことにしました。手やブラシでゴシゴシと。
それから、竿にかけて干します。

猪皮水洗い
猪皮水洗い後、陰干しに。

塗っておいた油が効いているので、内側はそれほど湿らず。水気がある程度乾いてから、陰干しにしました。
テーブルの縁や丸くしたりして揉んでも、ゴワゴワ感は取れず。乾いたら、また揉んでみる予定です。

16日目(猪二頭に逃げられる)

いつもの猟場。朝8時半、一番奥の沢左斜面から尾根へ取り付く。
今日は鹿1頭が目標。

出発はいつもより1時間送れ。
猟場一番奥の尾根についたのは3時間後でした。

歩き出して2時間後、尾根に辿り着く前、
腰まであるシダを抜けた林左手上部で1回、鹿の走り去る音。
尾根沿いを進んでいるとき2回は、
日陰の北側(谷の)で、それぞれ大型の鹿の走る音がした。

鳴くでもなく。どれも距離25m前後で、
私の進行方向とは逆の尾根や北の谷へ逃げていく。すべて鹿が風上。

藪と灌木が密に生えている場所で、こちらからは何も見えず。
鹿の動きや足音にも気づかずじまい。

一番奥の尾根では、新しい足跡、猪が食んだ跡も新しい。
午前中のもの。跳ねた土も、食み跡もはっきりして、まだ土の水分が乾いていない。

1時間早く、ここに到着していれば、出会った可能性が高かったかも。

でも、まだ近くにいることも考えられるので、
気を抜かず、ゆっくり、音を立てず進む。

環状になっている尾根のルート。
半分を過ぎて、出発地点(ゴール)が近づいてきた頃、
下りの尾根から南側15~20m下で、ガサガサと大きく藪が鳴る。

ふごっ。ふごっ。

60kgはありそうな、太い声がする。
しかも2頭。

しかし、藪と灌木が邪魔で全く見えず。
尾根の下は傾斜も急。また少し窪んでいて、余計に下が見難い。

ゆっくり立ち上がって、伸びをしても、左右に体をずらして見ても駄目。
まだ、声も音も大きいまま。

2分経ち、5分経ち、
ちょっとずつ、音が谷下へ進んいく。

焦ってきた。
(ここで一気に飛び出して、谷を下りつつ、勝負に出ればよかったかな~)

これ以上待っても、遠ざかっていくばかり。
待つのをやめて、2歩、3歩、4歩。

パリ、ぽきっ。
枯葉と小枝が積もる道を、そろり谷側へ進み出したその時、

フゴッ!

大きな声がして、一頭が右手へ走る。
もう一頭は、時折声を出しながら、谷の下へ。

「くうっ~。」

 

次は、猪に走られる前に走ろう。

15日目(二ホンリスかな)

今日は、新しい猟場の下見で1時間半ほどの山歩き。

探検部の基地から車で20分のところで、よく管理された杉の山。
15~20mほどの杉の木の間には、30㎝のシダが生えている場所で
光もよく入り、明るい森になっていました。

しかも林道が山の八合目まで整備されているので、六合目くらいまで車で上がり、
あとは徒歩でその林道を通ることも出来る場所です。

車を林道の入り口に止めて、リュックを背負って歩き始めたとき、

後ろから「登山かい?」と
軽トラに乗った地元の方に声をかけられました。

オレンジのニット帽に、猟友会のオレンジと蛍光色のベストを着た私をみて
「その恰好なら、撃たれることもないやろうから大丈夫やろ」と。

少し会話をして、軽トラがゆっくり通り過ぎるときに
荷台に目をやると、なんと、三頭の鹿が!
1歳の雄と2頭の雌。罠で獲ったとのこと。

俄然やる気がでてきました。

20分ほど林道を進み、時々通い(獣道)や走り(崖を駆け上った跡)を見つけては、
それを追って斜面を登りながら、時折止まっては、ぐるりと見回す。

確かに、大物が潜んでいそうないい雰囲気。

林道は山の下から上まで三段ありました。
南側の斜面では、大型の鹿のフンと足跡、小型の猪の足跡があり、
林道でも、同様に鹿、猪、そして狸の足跡まで。

銃も持たずに、GPS代わりの携帯とリュックだけなので
気楽に林道を歩いていると、5~6mしたのシダの中から

カサッ、と音が。

息を殺して、じっとしていると、
またカサカサッ。

ゆっくり小石を拾い上げて、近くに山なりで投げてみると、
傍に落ちている杉の枝の上に、体長も尻尾も共に20㎝くらいのリスが出てきました。

その時には、
「へっ~、細いタイワンリス。こんなところまで来てるのかな」

ぐらいに思い、耳の先にまで気を払うことが無かったのですが、
もしかしたらニホンリスだったかも。
シュッとして可愛らしいリスでした。

20180111

14日目(猟の装備とくくり罠)

今日は、休猟。疲れた体を休めます。
そして、昨日何とか解体した猪の片付けと共に、猟に必要なものを注文しました。
ここ2ヶ月で注文したものと合わせるとこんな感じです。
書きだしてみると、いろんなものがあり、自分でも少し驚きました。

登山靴
猟を始めてから、先輩方を真似て、山用のスパイク付きの足袋を購入しました。
しかし、巻き狩りでは問題なくても、一人での忍び猟はとにかく山を歩きます。
猟場では、急斜面の上り下りが主。しかも小石の多い場所や
沢も跨いで行くことも頻繁なので、足首に負担が掛かりがち。
そして真冬には、足先が冷たい。

足を軽くひねることもあり、1週間ほどで古傷の左足首も痛みが出てきました。
そこで、足首を守るなら、やっぱり登山靴かなと。

SIRIO(シリオ) P.F.68(◎)
使ってみるとこの登山靴、いい。雨の日も濡れないし、石の多い沢も急斜面も行けます。急斜面の下りは滑ることもあります。でも大体は大丈夫。足首をがっちり支えてくれるので、体も安定します。忍び猟で沢も歩く人、リュックが重い人には、こっちがお奨めです。気に入ってます。
もう一足は、軽くて柔らかいトレッキングシューズ(○)を購入しました。音が出にくく、足首の痛みも軽減されます。

でも足首に古傷がない方で、雪のない地方で巻き狩り中心。
もしくは春から秋の山、荷物も少な目の方なら山用の足袋がお奨めです。
軽くて、さすが山林作業用。滑らない。
歩く音も小さくできます。

・荘快堂 山林作業用 安全スパイクシューズ 山彦 I-78 27.0cm(春・夏・秋◎、冬△)

・アイゼン#1(○)
OUTAD 18本爪 アイゼン 簡単装着 収納袋付き フリーサイズ 雪山 登山 トレッキング (突然の雨や急斜面用に持ち歩くには、軽いしコンパクトなので、とても便利です。でも、雨の日の長靴に使わないように。知らないあだに外れます)

・アイゼン#2
simond シモン アイゼン クランポン カイマンII ミックス 10本爪 SI-2100MX

猟期の頭に、初めて巻き狩りに誘って頂いた時には、
「滑らない靴で」ということだったので、ジョギングシューズにこのアイゼンを履いて。
さすがアイゼン、急斜面でも全く滑らず。
でもベルト式(ゴム)なので、急な下りになるとゴムが伸びて切れるのが心配。雨の強い日は、靴との摩擦が減り、斜面を歩いている間に外れることも。

そこで、ベルト式でないものも注文。予備として持ち歩くには、重さもあり少しかさ張りますが安全には変えられません。

弾帯(○)
3つポケット付き。

迷彩散弾銃のシェルホルダーベルトのウエストショルダーバッグ狩猟スポーツ

10発入れて、初めての巻き狩りに持っていくと、笑顔で皆さんに「そんなに持ってきたんか」と。
多く撃つときでも、2、3発。全く撃たないことも珍しくないようで。
(今のところ3回行って、一発も撃たず)

でも、もし大猪が出て、へたくそなので3発外して、まだ犬が止めていてくれたら。
もし、一日で3発×3回外したら…。
などと考えると、10発は入れたい。あとは使わないといいだけだから。
ポケットがついているので、車の鍵など小物を入れるにはお奨めです。
でもスリムな体系の人には、少し腹回りが余ります。

巻き狩り用(◎)
・ALINCO アマチュア無線機 144/430MHz ハンディタイプ リチウム充電セット付属
・スタンダード アルインコ アイコム ヤエス ハイグレードタイプカールコード式耳掛け式イヤホンマイクDXタイプ 1ピン防水ねじ込み式プラグ

次は、獲物を獲った後に必要なもの。
初めて獲った猪は、アジを捌く用な小さい出刃包丁を使ったのですが、
まだ下手くそなので、曲線に合わせるのが難しい..。せっかくの脂が皮に残ってもったいない。しかも、皮をなめすときに、またきれいに取り除かなくてはならないため、二度手間になってしまう。
そこで、刃筋に曲線のある皮ハギ専用のナイフを注文しました。

皮ハギ用のナイフ
猟師といえば、銃の他に大事なものは刃物。いい切れ味のもの、専用のナイフが欲しい。
止めさし用解体用には、大久保鍛冶屋さんに八寸の剣鉈と解体用のナイフを注文してきました。こちらではデザインや形も、相談できます。自分で柄を作るなら、刃のみでもOKです。柄の部分には鋼が入っていないので、金属用ドリルで簡単に穴も開きます。また後日、必要なら研ぎもお願いできます。

それから、解体時の骨盤を開くときには、鉈と木槌かゴムハンマー(棒でもOK)を。

冷凍ストッカー(◎)
捌いた肉をどうするか?
骨は大鍋でスープ用にぐらぐら煮ています。が、肉と皮は冷蔵と冷凍庫へ。

小型の猪でも、鹿でも、普通の冷蔵庫では、一頭がやっと入るくらい。

やっぱり冷蔵ストッカーはいるということで、すぐ以下を注文。
もっと安いのを注文したのですが、離島・僻地へは配達しないとのことで、お店からキャンセルのメールが来てこれに。

でも、さすが210L。後で加工する足や毛皮など、いろんなものが入ります。
‐20度の急速冷凍機能付き。一年通して使ってみて肉の痛みがなく、使い勝手も良ければ、来期はもう一つ買おうかと考えています。

210Lの冷凍庫(急速冷凍機能付き)

真空パック機
冷凍ストッカーと共に猟師の必需品です。汁物もできるので猪骨スープ用にも。この業務用で、真空にする時間を長めに設定しても、上手く真空になってくれないときもあります。次は思い切って、一桁違う真空パック機を買う予定です。
 

皮なめし用の生ミョウバン
そのまま擦り付けても、水に溶かすのも簡単です。


くくり罠用、その他加工用に
・リョービ(RYOBI) ドライバードリル CDD-1020 645801A
・GREAT TOOL コバルトHSS鋼ステンレス用ドリル刃セット 10本組 GTNSDSmm10 (金属・金工)

ナイフの柄の部分の持ち手を樫の木や鹿の角で作り、柄に穴をあけるときに。
また、鹿や猪の爪を使ったボタン作り、猪の牙の加工。オートマタなどの木工にも大活躍です。

・アーム(ARM) アームスエージャー HSC-600

この他にも、ワイヤー2種類(4mm:6×19と6×24)各100m。
より戻し、シャックル、塩ビパイプ、塩ビパイプの蓋、バネ抑え用のステンレスパイプ。
押しバネ。くくり金具、スリーブ(ダブルとシングル)。
ワイヤー止め(六角で絞めるネジ付)、締めつけ防止用ネジ(蝶ネジ付)。
ただ、忍び猟が忙しくかつ面白く、ワナは5つ作りかけのまま…。
山を歩きながら獲物を探す方が、性に合っているようです。

一年目は、何かと物入りです…。
また、猟期を通していいものが分かったら追記していきます。

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雨の日の猟に、装備を追加しました。

ただし歩くときに擦れると音がするので、普段渉猟で使う方で、かつO脚の方には、強い布で作った手製のゲートルがお奨めです。
足首からひざ下までの長さを計り、ゴムは一番上と下から10㎝のところに付ける。下に布を余らせることで、靴の上までカバーできます。下のゲーターの写真と同じように、靴裏の窪みに通すゴムも付けて、しっかり固定すると完璧です。

Triwonder 登山用 ゲイター スパッツ ロングスパッツ 防水 撥水 防寒 悪天候対策 男女兼用

これは、雨とと共に、マダニや小石、枝などが靴に入らないように。手作りしたゲーターと交代で使用します。上記のものは、ひざ下を一本のゴムで止めてあるのですが(引張って調整する)、そのゴムが10回も使わないうちに片方が1か所切れたため、予防も含め4カ所を縫い直して補強しました。あと渉猟では、歩く際の衣擦れの音が大きいように感じます。それ以外は、藪漕ぎや雨の日は大活躍です。渉猟には、音の出ない布製がお奨めです。

次は、Dexshell Thermfit Neo防水手袋

それほど寒さが厳しくない徳島南部なので、渉猟の雨の日専用として。歩かない人には、冬は体が温まるまで、指先がかじかんでしまいます。
滑り止めがやや少ないけど、銃を持った時に滑りは、それほど気になりません。ただ、指の締め付けがきついので、ワンサイズ大きめがお奨めです。

冬の雨が降らない日は、外側が柔らかい羊皮で中が綿(絹?)で二重になったビジネス用の手袋を使っています。暖かく滑らないし、とてもしっくりきます。

単独、犬なし忍び猟で、初めて猪を獲る(13日間)。

以下は、犬なし単独の渉猟で初めて猪を獲るまでの記録です。
一連のシリーズで。


1日目
くくり罠を仕掛ける。
ばねを収めるのに四苦八苦する。時間にして10分ほどか。右の大胸筋が攣りそうになる。
終わってみると、右肘がなぜが痛む。
しかも帰宅して、ばねをはね上げるための留め具のネジを閉め忘れたのに気づく…。

2日目
銃をもって山にはいる。鹿も猪も見ず。
林道の突き当りを左の尾根へ上がり、尾根沿いをぐるっと回り、谷を降りてくる。合計3時間くらい。

(後で読み返すと、ここは普通なら六時間はかかる距離。この時間で回ってくるなら、早々早足で、大きな足音だったはず。何にも会えないのは当然だ…。)

3日目
この日は、林道の中ほどから谷を上がり、尾根向こうの通い(獣道)沿いへ先に。
二つ目の尾根に入ったところで、大きな鹿が先に私を見つけ、鳴いて走り去る。
距離にして25~30mほど。
弾も入れておらず、全くどうすることも出来ず。
この日は、昼食を入れて山の中で5時間ほど。

4日目
林道右奥に設置している罠を確認して、そのまま沢の右側を上る。
この日は、谷と尾根を越えて頂上まであがり、朽ち果てた小屋のところまで下りて、沢を渡り、またいつもの林道へ戻るルートで。

歩き始めて30分ほど。林道の先の小径の突き当り。その先を5~60m上ったところで、鳴き声がする。

初めは猿と気が付かず。
(口笛のような音、カタカタと喉を鳴らすような音が数秒続く)
鹿の群れでもいるのかと思って、慎重に、慎重に。一歩歩いては止まり近づく。

すると左手真横、やや前方の沢の向こうの斜面上から、鹿が鳴いて逃げる。小型と中型の間くらい。目先に囚われて、周りの注意を怠っていた。

(と言いつつ、この先以来何度も、左右上方、ちょうど視界の両端で鹿に鳴かれ、逃げられることに…)

まだ、希望は続く。視線の先の音はまだ止まず。
さらにゆっくり近づくと視線の先の木漏れ日が一瞬陰になる。
小鹿を発見。

今度こそ、先に見つけたと思ったけど、おそらくはこちらを見つけてゆっくり移動し始めていたのではないだろうか。前を向いて、斜面を駆け出し始める。
灌木が多く、鹿の全体を望めたのは、初見の一瞬だけ。

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今日二度、銃を構える。
一度目は、朝10分くらい歩いた時、枯れ枝と枯葉の絡まったやつ(鹿の頭と上半身にそっくり)を鹿かと思い、銃を構えたが3秒以上ピクリとも動かず命も通っていないようなので、数歩動くと形が変わり、鹿じゃなくなった…。
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小鹿はそのまま背を向けて、さらに急斜面を駆け上がる。
距離にして、30m 程。
この日唯一の射撃のチャンスだった。
後ろ姿の一瞬だけ。
遠く感じて撃たず。
(外してもいいから、撃てばよかった)

その後、急斜面を上り尾根の少し下の通い上の足跡を追っていくも、姿見えず。
脱砲して、急斜面を下り元の沢の小径へ戻る。
5時間半くらい。

3kgぐらいの銃を持って歩くので、罠の時に痛めた右手の肘右側が痛い。
古傷の左ひざも急斜面を下るときや無理な捻りでゆっくり歩くときに痛む。
ヘルニアの腰も痛む。連日の疲れが出てきたかな。

5日目
いつもの林道を早めに右側の谷から上へ向かう。
上がって30分ほどで谷が左右に分かれる。
右側の岩の多い谷を選ぶ。
勾配が急になってきたとき、右側で鹿がやや小さい警戒の声を上げる。

「また鹿に先に見つけられたか」と思いつつ、気を抜いてザッザッと2歩進むと
今度は左側前方から、鹿の大きな警戒音が!

連続して、鹿に逃げられる…。

そこから更に岩場の沢を登る。
左側の尾根に取り付き、尾根沿いに左へ。
すぐ谷へ降りて、反対側の尾根へ登ったところで、現在地を確認するために休憩。

1分もしないうちに、谷を挟んだ向かいの斜面で、20~30m離れた右手後方から

ドドドドドドドドド

と大きな音が近づいてくる。
ただし尾根両側の木々の中で姿は見えない。
音がするのは、自分のいる位置より2~3m上。

音の差からも、二頭いるようだ。

木々の間から一瞬見える。大きい。
直進してきて、ちらっと姿を見せた途端、右へ。そしてまた灌木と藪の中へ、足音は、枝尾根の向こう側から谷の下へ消えていった。

音が聞こえてくる方向に合わせて、銃口を動かしていたら、
谷の向こう側でも、体全体が見えた瞬間に撃てたはず。

くっ~。

 

6日目
この日は昼からの出猟。
これまで昼過ぎにになると鹿はぱったりと姿を見せないので、可能性は低いと思いつつも慎重に進む。
朝なら鹿が出そうな杉林と雑木のある谷が、林道奥の右手にあった。

そのまま谷を小一時間ほど上がり、左手の斜面に取り付く。
登り切って、尾根沿いに頂上を目指すことに。

八割方登ったところで、位置を確認するために休憩。

するとドドドドドドドドドと音が。複数いるような感じ。
音の大きさからすると少し遠そう、でも近そうでもある。
昨日のようには、はっきりと距離が掴めず。また鹿かな?

スマホと右手袋をそのまま地面に置いて、今度は、銃口を音のする方へ。
そのまま四五歩進む。
音に合わせて、銃口を尾根沿いの通いへと向ける。

やっぱり近そう。
足音は、谷へ少し降りてまた戻り、消えた。
尾根の通いは両側の灌木が濃く、曲がった通いの先に見えるのは木々だけ。

遠くへ行っちゃったか…。

そのまま待つも、十数秒、音は消えたまま。
しょうがないと諦めて、また位置の確認をしていると、7~8m先の重なり合った木々、そこからまっすぐここまで通じている通いから、20㎏ほどのウリ坊のがの消えて程無いようなどんこが二匹、トコトコ、こちらへ近づいてくるのが見える。

とっさに座ったまま銃を構える。
雌の親がついてきていないかと二匹の後ろに銃口を向ける。

親はいない。二匹だけ。
すぐに手前のウリ坊に銃口を向けなおす。
目が合った。

「何だろう…。」

そんな顔をした後、
すっとウリ坊が左を向く。

耳に向けてスラッグ弾を発射!
反動で少しのけ反る。

パタッとウリ坊が倒れる。
(イメージでは)

しかし本物は、トコトコ左の谷へ。
後ろのウリ坊は右下の谷へ。

当たらなかったのに落胆したのか。

二発目も打たず、追いかけることもせず。
一息吐いて、スマホをリュックに入れて尾根をさらに登り出す。

頂上手前で、また森の音を聞くために止まってみるも、動物の足音などは聞こえず。
尾根を来た方向へ戻る。
撃ち漏らしたところまできて跡形をみてみるが、
どこに弾が当たったのかさえ分からず。薬莢も谷側へ落ちたようで見つからず。

尾根下の通いを通って、比較的広い斜面を降りる。
そのままほぼ直進しながら、どしどし歩いて元の林道まで30~40分ほどで戻る。

・スラッグ弾じゃなくて、6粒なら2匹とも転ばせられたか?
・頬づけ、照星にウリ坊が乗っておらず狙いが甘かったか?
・肩付けをしっかりせず、手が大きくぶれたか?
・引き金を引くとき銃口がぶれたか?
・5mとすぐ近くだったので、油断があったか?

仕留めるまでは油断禁物。
引き金を引くまでの動きを習慣化する。
咄嗟でも、完璧にできるように。

「次は外さんぞ!」

全部で4時間ほど。
山では午後3時前には、少し暗く感じる。
谷を進むときには、要注意。

7日目
疲れが溜まってきたか、体が少し重い。
今日はいつもの林道から右側の谷へ。
20分ほど谷沿いを登っていくと、左斜面の上部を中型の鹿が駆け上がる。
距離25m。
杉や樫の木などの枝が多く、ちらちらと木々の間から逃げる姿が見える。

それ以降は、猪も、鹿も見ず。
遠くても、最初に見たときに撃った方が良かったか。今年はまだ一年目。
射撃も練習中だから、自分の癖、銃の癖を知るためにも、無駄弾も必要だろう。

8日目
この日は、林道の手前からすぐに通い沿いに左側の尾根に向かう斜面に取り付くが、途中は急で竹や小さな灌木が多く、その間を四つん這いになっても上手く進めず。すぐに下の方向の通いを通って、鹿を追うことにする。

ただ、今日は森がいつもと違って、音がない。
とても静か。

いつもの林道へ下りて、奥の沢から右の尾根の急斜面を登る。
昨日よりも体が重く、息が上がる。

途中、15分静かに待ってみる。
やっぱり音はせず。

尾根の頂上で弁当を広げる。
15cmほど、背中に横縞のあるコゲラが4,5羽頭のすぐ上で、木をつついている。
力強い音が続く。
ほんの1mほどに近づいても、逃げないんだな。
そのうちのコゲラに目白が一羽寄ってきたが、すぐ威嚇されて逃げだした。

9日目
日没一時間前に出発。いつもの林道の奥まででタイムアウトとなる。
森は静か。やはり明日からは同じ山の奥、尾根沿い深くに行ってみるか。それとも山を変えるか。

10日目
朝一番に新しい猟場へ。
下見もせずに行ったから大変だった。
下に沢が見える山と谷。沢のすぐ上の泥の場には、ヌタバがあった。
新しい足跡も。沢の上の小径から見たとき、獣の動く時に出る枯葉や枝を踏む音がした。

けれども山に上がってみると1mを超すシダが生い茂り、登るのに一苦労だった。そして谷に降りることも。
谷に降りたら小径があり、なんとか小一時間沢沿いを上がったけれど、雑木の枝が多くて、鹿が鳴いても姿さえ見えずに断念。
沢から下まで降りて、探検部の基地へ戻る。

次に、いつもの猟場へ。
左の尾根まで登り、ぐるっと大きく3つの山の尾根を環状に回ってくる。
2時ごろ、一番奥近くの南側の尾根下に小型の鹿が二頭鳴いて、走り去る。30mの谷下、木々の間に一瞬見えただけ。

谷を降りて追ってみる。しばらく待つも何も動かず。
灌木が生い茂る急斜面を再び登り、尾根を越え北側の斜面をできるだけ平行に、ゆるやかに下りる。
日も陰ってきたとき、斜面の上方に鹿が鳴く。
今度は、照星を鹿に合わせ、進行方向に合わせて銃身を動かす。
もう一度姿が確認できれば、撃てた。
けれども、木々の陰で、二度目は見えず。

でも、この経験は大きかった。
次は撃てる。
20171220

11日目
昨日は頑張りすぎた。
一歩山にはいると、体が重いのが分かる。

林道の入り口の一番手前から尾根沿い、すぐの谷をまっすぐに上がって
尾根伝いにぐるっと猟場を回る予定だった。

心折れる。
一番奥の尾根から、手前の沢へ向けて、まっすぐ降りてくる。
急すぎて、足を滑らせた音に子鹿が驚いて尾根を走る。
尾根向こうに安土がないため、銃口で追ったが撃てず。

疲れたときは、谷の上で1時間くらい待ち伏せするのもいいかも。
20171221

12日目
今日は午後からの出猟に。
いつもの林道から早めに左の尾根に上がり、
2時間で尾根沿いに猟場の山を一周してきた。

鹿、猪の形跡は多いが、
昼からの猟では、全く姿を見ず。鳴かず。

昼間は別のところに行ってるのかな。
午後の猟の時は、どこか違うところへ行けるように場所を探さんといかん。
あとは、日の出に合わせて、猟場に着けるように
もっと早めにでるのも試そう。

今日は初日以来、目視できた鹿猪がゼロだった。
20171223

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九州へ2週間の遠征
その間に、海外のハンティング映像をまとめて見る。
その時のメモ書き。基礎の見直しも。

・止まらず、鹿のように足を上げてやさしく地面に足を乗せながら歩く。
・狩場に1時間前に着いておく。
日の出前から到着し、日の出後の1時間が大きい鹿を撃つチャンス。

・ゆっくり2~3歩ずつ歩いては止まり、周りを確認する。
・道を歩くときは、木や葉の近くを歩く。

・如何にその状況下で、安定して銃を撃てるか。
木に銃身や肩、左手、右手など体の一部を接して支え固定する。
猟場の特長に合わせて、必要なら猪や鹿の逃げる動きに合わせて、銃も安定して動かせるようにする。

・気づかれないように、ゆっくり挙銃し、銃口を向ける。
動物が木の陰に入ったら、こちらが見えないので、
その時に大きく動く必要があるなら動く。

・撃った後は、毎回脱砲する。

猟の候補地を探す。
・一週間ごとに猟場を変える。
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13日目
2週間の九州遠征の後、徳島に戻る。
今日は久しぶりなので、猟が可能な日の出(7:08)から猟場に入る。
しばらく山に入っていないので、どれだけ動物に合うかと楽しみ。

昨日一日、夕立のような強い雨だったので、
山の落ち葉も土も湿って足音も響かずに歩きやすい。
その上、休み中に学んだFox Walkで、いつもに増して音の出ない歩き方になっている(気がする)。

いつもの林道の突き当りから、右の谷へ。
沢沿いに上がって、途中から左の尾根に取り付く。
尾根沿いから少し右の谷へ下ったり、上がったりを繰り返し、一番奥の尾根へ到着。

目白の小さな鳴き声やコゲラのコッコッコッコッコッコッコッという
木の幹を突く音が響く。
谷を越えた左側の尾根からは、サルが騒いでいる。
その他には、鹿も猪も姿も見えず、鳴き声もせず…。

久しぶりの急斜面で、息が切れがち。
山の頂上すぐ下で、以前鹿2頭を見た南側斜面へ向かう。
山に入ってから三時間、すっかり日も出て南側は日向で鹿もいるはずと。

10分ほどかけて、20mの距離をゆっくり移動しながら、木々の間の鹿を探す。
いそうな雰囲気だけれど、発見できず。鹿も鳴かず。

11:10。
目は南側の斜面を見らみつつ、腹も減ったので、少し早めの昼食をとる。
何も動かず。

尾根沿いに、南の斜面を見ながら移動して10m進む。
7~8m先の尾根で、小さくフゴッと鳴き声がした!
振り向くと5~60kgの猪が二頭、こちらに先に気づいて、
尾根の右と左へ分かれて谷へ逃げ込むところ。

すぐに銃口を向けて狙いをつけるが、ちょうど尾根は上がっていて、もし狙いを外すと弾は尾根向こうへ行ってしまうため撃てず。
後から逃げた猪を追って、右の谷へ駆け降りるも、その時にはもう谷の奥へ逃げて猪の姿は見えず。2~30m先で枝の折れる音が小さくするだけ。

くっ~。またか。

天を仰ぎつつ、息を吐いて、また尾根を上がる。
しかし、五歩も歩かないうちに、更に10mほど先に四頭のどんこが右の谷へ向かって駆け出した。

銃口を向けたときには、先頭の1、2頭目はもう姿はない。
3頭目は、谷の下へ向かっている。
4頭目は、二歩小さく歩いてこちらを振り向いた。

その首元を狙って、ドン

狙い通りに弾が当たり、猪が谷へ転落。
5m下の灌木に引っかかり、足をばたつかせている。
更に3m落下。

脱砲して、谷を駆け降りる。これ以上落ちたら上げるのが大変。
ナイフを腰の鞘から取り出し、止めさし。
11:20 はら抜き20kg、春に生まれた雌の猪でした。猟人生、初めての一頭。

追記
以前に5m先の二頭いたどんこの狙いを外した時には、
あまりに近くで外しようもないから、銃のせいかもとちょっと疑ったこともあったけど、今回の命中で、前回は全くの自分の腕のせいだと判明。そして反省。

20180109