狸も痛そう。

猟をしているとき、ときどき藪漕ぎをします。
動物の作った道(通い)を行くだけでなく、追っている獲物の先回りをしたり、新しい猟場を見つけるためだったり、尾根の向こう側へ早く行くためだったり。

そんな藪漕ぎのときに一番厄介なのが、いばらのトゲです。
それは動物たちも同じ。
このタヌキもかなり痛かったろうと思います。

皮膚ごとごっそり茨にひっかかってました。
皮膚ごとごっそり茨にひっかかって、かなり痛っただろうに。

尻の隣をモグラが…。

最近は、渉猟(歩き回って猟をする)しながら、鹿狙いの時には、30分ほどじっと獲物が来るのを待つこともあります。

鹿は耳が良いため、100m先からでも簡単にこちらの足音を聞きつけます。
そのため、鹿がいそうな場所で、もしくは鹿が通りそうな場所へ先回りして、忍んでおくのです。そんな待ちの時間には、コゲラやメジロなどの鳥や時には猿などもやってきます。

そして、この日は何とモグラ。

どこからともなく、「ガサゴソ、ガサゴソ」
近そうなのに音は小さく、どこから音がするのかしばらく分かりませんでした。

きょろきょろしていると、お尻の横の葉っぱが、ぐぅーと持ち上がりました。
止まったと思ったら、またぐぐっと浮いたり沈んだり。
「ブチブチブチっ」根っこが切れる音がして…。

こんな時は、猟をしているのも忘れて、思わず吹き出しそうになってしまいます:)。
色んな動物の生活の様子が分かる。森の楽しみの一つです。










3月中旬の猟(ビャー!)

一週間の東京出張から戻って、3月16日14:00から久々の猟へ出かけました。
この日は朝から雨で、午後から少し強くなってきたところ。

いつもの猟場の反対側、川を挟んだ奥へ広がる第2の猟場へ向かいました。
出発地点を過ぎてすぐ、丘の上にある荒れた田んぼには、2~3日前の大型の鹿の足跡があります。

この一ヶ月、なかなか猪や鹿の痕跡が見つからず、今一つ緊張感がなく困っていましたが、雨に打たれながらも、ぐっと気も引き締まります。

今日は、いつもと逆回りで、民家の横を家主の方に挨拶してから、一気に斜面を奥へと登ってきました。

今日は、葉っぱを叩く強い雨の音で、耳が全く効きません。2時間を過ぎたあたりから、谷側に靄(もや)も出てきて、視界も20mくらい先まで何とか見える程度です。慎重に進み、止まっては、右やや後ろから左までぐるっと探す。その繰り返し。

登り斜面では、何も見つけることができずにいました。足跡は雨に叩かれて形を失い、糞も雨に濡れて、いつのものか判断できず。
それでも、ゆっくり進みます。

疲れがでてきたころ、ちょうど下り斜面へ入りました。屈んでは灌木の隙間から、鹿を探しますが、薄暗い谷側の斜面では、10mくらいまで近づかないと、はっきりと何か分からないほどです。

尾根から7m下ったところで、

ビャー!!

中型の雌鹿が、相当驚いたのでしょう。
下り斜面、距離は15m。
飛び上がるほどの声を出して、左10時の方向から、真横へえらい勢いで駆け出していきます。

銃で後を追うも、1秒ほどは灌木の間に姿がちらちら見えるも、その後は灌木が重なり姿が見えなってしまいました。

20秒ほど足音を聞いて様子を見た後、斜面を降り歩きながら足跡を追っていきます。
はっきりした足跡。蹴りだした土。
通いを横切る枝には、鹿の毛が付いています。

走り高跳びのバーのようになった、ひざの高さにある横枝にも。
この真横に伸びた枝を飛び越えると、今度は頭が上の枝につっかえるような場所も、淀みなく走り去っていったのが、不思議でしょうがない。

さすが鹿。
猟場で歩いていると、人間からするとほぼ崖、そんな急斜面の10㎝幅のところでも、足跡が付いている。本当に驚きです。

今日は、3時間のみ。
鹿をびっくりさせたということと、久しぶりに聞いた声が嬉しかったので、良しということに。

でも、手ぶらで帰るのは、口惜しいので、
きくらげを一山とってから帰宅しました:)。

キクラゲ
いつの間にか雨も止んで

34日目(鹿が猪に)

34日目
・ゴルゴ13の偉大さをあらためて知る。
・鹿が猪に替わった話。
・山が一番、足は2番、犬はなし。

◇今日は、あらためて、ゴルゴ13の凄さを知りました。

2つの猟場では、4~5時間歩いても
鹿も猪も2週間ほど姿を見ないため、新しい猟場を試してみました。

朝から曇天で、いつになく気温が高く、風もない。

使われていない段々畑を降りて、小川を超えて低山が奥へ連なるような場所。
小川を超えて対岸に入ると、猪の食み跡あり。
20mほど登ると、1m幅の小道があり、やはり猪の食み跡が所々に。
新しい鹿の糞も多い。

小道は、尾根をぐるりと回って、枝尾根を越えながら、少しずつ登っていきます。
数歩歩いては、あたりを伺いながら、ゆっくり進みます。

別の尾根を回り、10mすぎたところ。
谷向こうの尾根の斜面。距離約15m。
3m視線をあげたところに、40㎏くらいの雌鹿が不意に右から歩いてきました!

鹿と私の間には、谷を挟んで、灌木がある。
とくに目の前には5~6本に分かれた樫の木があって、
ちょうどその向こうに鹿が入ってきたのです。

「棒立ちの鹿を見つける」

ここ2週間の目標が、こんなところで達成されるとは。
(我慢して、歩いてきてよかった)
心臓は、早く、強く打ち、銃が揺れそうに感じるくらいです。

足場は、幅20㎝くらいで、40度を超える急斜面。
音を立てずに、なんとか左足を10㎝ほど鹿に向け、
腰をひねりながら、ゆっくり挙銃します。

5秒すぎ、10秒過ぎ…。

やっと、鹿が樫の木の右側に体半分出して、
向こうを向いて腰の高さにある草を食べ出す。

狙うのは、首の下の方。
(首の上の方は外しそうだし、体に傷はつけたくない)

期待と興奮で、心臓は相変わらず
ドドドドドドドドドと連打中。

ドーン!

鹿は、左へ走る(弾は外れた)。
足場も悪く、また、すでに腰を左にひねっているため、これ以上左へは撃てない。
くっーと思って、鹿を目で追う。

10mほど左へ走った鹿は、なぜか尻だけ見せて、枝尾根の向こうで止まった。
足を止め、じっと音を立てずに、隠れているつもりのよう。

「ラッキー!」と欲に駆られて、向こうの谷へぐるっとダッシュ。
(ここで走らずに、またゆっくり進めば良かったのに…)

どたどた走るもんだから、当然鹿もこちらに気が付き、跳ねる。走る。
向こうの谷に着いた時には、鹿は30m先の急斜面を駆け上がり、頂上へでるところ。
こちらは、そんな急斜面は、走れない。

また、やってしまった…。
貧すれば鈍す。獲れない猟師は、駄目ですね。

◇でも今回は、ここからが違う。
反省して冷静になる。

撃たれてもすぐに止まった鹿なら、またすぐに止まるかも。
ということで、鹿の通った後を追わず、急斜面の枝尾根をぐるっと迂回して向こう側から頂上へ向けて追うことに。

30分以上かけて、ゆっくり音を殺して進む。距離にして300m程。
尾根に上がったところで、膝くらいまでの草が茂る30㎝幅の小道があった。

そこには、20㎝幅の通いがある。
鹿の新しい糞も。

この小道を左に下るか、右に登るか。

右を選ぶ。
ゆっくり、静かに。
十分に時間を使って。

鹿が上がってきたところに出る。
山は、左右の尾根と奥の斜面に分かれる。
奥の上り斜面に向かって数歩進むと、下草の間に30㎝のすべった足跡があった。

鹿の焦りようが伝わってくる。
爪跡の先は、奥の斜面へ向いている。

尾根筋を超えて、その斜面側へ入った途端、
鹿が15m先の藪の中をバタバタ走る音が(姿は全く見えず)。
やっぱり、まだ近くにいる。

膝をついて、灌木の間から音のする方に目をやるも、
見えるのは椎や榊の低木、枯れ草がところどころに覗くくらい。

でも我慢。

膝をついたまま、音を聞いていると、今度は、左上の尾根からガサッ。
ガサ、ガサッ。
距離は、20mもない。

姿は見えず。
音が尾根沿いに下りてくる。

見えた!
ほんの一瞬、黒い影が。

こちらに気づかず、鼻で何かを探しながら、
止まっては進み、下りてくる。

今度は、もっと我慢。
銃をギリギリまで上げない。

10m。
まだ灌木や草が邪魔で、姿は見えない。

6m、足から上の体がすべて見えた。
銃を上げ、首に狙いをつける。

「あっ、くそッ」
灌木の後ろに入った。

狙いはそのまま。
ガサ、ガサッ。出てきた。

5m、もう目の前。
こちらに気づいて、目が合う。

鼻先を左に向けた瞬間、ドーン!

今度は命中。倒れて、足をバタバタさせながら下に落ちてくる。
50kgを超えるオスの猪。

とれたのは外した鹿のお陰。

ーーーーーー

追記:
単独での忍び猟・渉猟で一番大事なのは、動物の陰の濃い山を選ぶことだと思う。

当たり前のようだけれど、足が強くても、いい犬がいても、
どんないい銃があっても、獲物が少ない場所では出会うのが大変だというのが実感です。
足も弱いし、犬もいない自分のような初心者の方には特に。

いい山とは、小さい枝尾根が多い山。獲物との出会う機会が多いから。
高くても300mくらいまでが理想的。
餌が多い。椎や樫が生え、場所によって下草もある。

天気は、雨の後。風は弱め、曇天。無風なら快晴も。

獲物の引き出しのことも考えると、
なんとか1~2時間くらいで山から下せそうな距離の猟場がいい。

特に単独猟では、山からとった獲物を一人で引き出すところが、獲る次に大変な作業となるので。

20180215

単独、犬なし忍び猟で、初めて猪を獲る(13日間)。

以下は、犬なし単独の渉猟で初めて猪を獲るまでの記録です。
一連のシリーズで。


1日目
くくり罠を仕掛ける。
ばねを収めるのに四苦八苦する。時間にして10分ほどか。右の大胸筋が攣りそうになる。
終わってみると、右肘がなぜが痛む。
しかも帰宅して、ばねをはね上げるための留め具のネジを閉め忘れたのに気づく…。

2日目
銃をもって山にはいる。鹿も猪も見ず。
林道の突き当りを左の尾根へ上がり、尾根沿いをぐるっと回り、谷を降りてくる。合計3時間くらい。

(後で読み返すと、ここは普通なら六時間はかかる距離。この時間で回ってくるなら、早々早足で、大きな足音だったはず。何にも会えないのは当然だ…。)

3日目
この日は、林道の中ほどから谷を上がり、尾根向こうの通い(獣道)沿いへ先に。
二つ目の尾根に入ったところで、大きな鹿が先に私を見つけ、鳴いて走り去る。
距離にして25~30mほど。
弾も入れておらず、全くどうすることも出来ず。
この日は、昼食を入れて山の中で5時間ほど。

4日目
林道右奥に設置している罠を確認して、そのまま沢の右側を上る。
この日は、谷と尾根を越えて頂上まであがり、朽ち果てた小屋のところまで下りて、沢を渡り、またいつもの林道へ戻るルートで。

歩き始めて30分ほど。林道の先の小径の突き当り。その先を5~60m上ったところで、鳴き声がする。

初めは猿と気が付かず。
(口笛のような音、カタカタと喉を鳴らすような音が数秒続く)
鹿の群れでもいるのかと思って、慎重に、慎重に。一歩歩いては止まり近づく。

すると左手真横、やや前方の沢の向こうの斜面上から、鹿が鳴いて逃げる。小型と中型の間くらい。目先に囚われて、周りの注意を怠っていた。

(と言いつつ、この先以来何度も、左右上方、ちょうど視界の両端で鹿に鳴かれ、逃げられることに…)

まだ、希望は続く。視線の先の音はまだ止まず。
さらにゆっくり近づくと視線の先の木漏れ日が一瞬陰になる。
小鹿を発見。

今度こそ、先に見つけたと思ったけど、おそらくはこちらを見つけてゆっくり移動し始めていたのではないだろうか。前を向いて、斜面を駆け出し始める。
灌木が多く、鹿の全体を望めたのは、初見の一瞬だけ。

----
今日二度、銃を構える。
一度目は、朝10分くらい歩いた時、枯れ枝と枯葉の絡まったやつ(鹿の頭と上半身にそっくり)を鹿かと思い、銃を構えたが3秒以上ピクリとも動かず命も通っていないようなので、数歩動くと形が変わり、鹿じゃなくなった…。
----

小鹿はそのまま背を向けて、さらに急斜面を駆け上がる。
距離にして、30m 程。
この日唯一の射撃のチャンスだった。
後ろ姿の一瞬だけ。
遠く感じて撃たず。
(外してもいいから、撃てばよかった)

その後、急斜面を上り尾根の少し下の通い上の足跡を追っていくも、姿見えず。
脱砲して、急斜面を下り元の沢の小径へ戻る。
5時間半くらい。

3kgぐらいの銃を持って歩くので、罠の時に痛めた右手の肘右側が痛い。
古傷の左ひざも急斜面を下るときや無理な捻りでゆっくり歩くときに痛む。
ヘルニアの腰も痛む。連日の疲れが出てきたかな。

5日目
いつもの林道を早めに右側の谷から上へ向かう。
上がって30分ほどで谷が左右に分かれる。
右側の岩の多い谷を選ぶ。
勾配が急になってきたとき、右側で鹿がやや小さい警戒の声を上げる。

「また鹿に先に見つけられたか」と思いつつ、気を抜いてザッザッと2歩進むと
今度は左側前方から、鹿の大きな警戒音が!

連続して、鹿に逃げられる…。

そこから更に岩場の沢を登る。
左側の尾根に取り付き、尾根沿いに左へ。
すぐ谷へ降りて、反対側の尾根へ登ったところで、現在地を確認するために休憩。

1分もしないうちに、谷を挟んだ向かいの斜面で、20~30m離れた右手後方から

ドドドドドドドドド

と大きな音が近づいてくる。
ただし尾根両側の木々の中で姿は見えない。
音がするのは、自分のいる位置より2~3m上。

音の差からも、二頭いるようだ。

木々の間から一瞬見える。大きい。
直進してきて、ちらっと姿を見せた途端、右へ。そしてまた灌木と藪の中へ、足音は、枝尾根の向こう側から谷の下へ消えていった。

音が聞こえてくる方向に合わせて、銃口を動かしていたら、
谷の向こう側でも、体全体が見えた瞬間に撃てたはず。

くっ~。

 

6日目
この日は昼からの出猟。
これまで昼過ぎにになると鹿はぱったりと姿を見せないので、可能性は低いと思いつつも慎重に進む。
朝なら鹿が出そうな杉林と雑木のある谷が、林道奥の右手にあった。

そのまま谷を小一時間ほど上がり、左手の斜面に取り付く。
登り切って、尾根沿いに頂上を目指すことに。

八割方登ったところで、位置を確認するために休憩。

するとドドドドドドドドドと音が。複数いるような感じ。
音の大きさからすると少し遠そう、でも近そうでもある。
昨日のようには、はっきりと距離が掴めず。また鹿かな?

スマホと右手袋をそのまま地面に置いて、今度は、銃口を音のする方へ。
そのまま四五歩進む。
音に合わせて、銃口を尾根沿いの通いへと向ける。

やっぱり近そう。
足音は、谷へ少し降りてまた戻り、消えた。
尾根の通いは両側の灌木が濃く、曲がった通いの先に見えるのは木々だけ。

遠くへ行っちゃったか…。

そのまま待つも、十数秒、音は消えたまま。
しょうがないと諦めて、また位置の確認をしていると、7~8m先の重なり合った木々、そこからまっすぐここまで通じている通いから、20㎏ほどのウリ坊のがの消えて程無いようなどんこが二匹、トコトコ、こちらへ近づいてくるのが見える。

とっさに座ったまま銃を構える。
雌の親がついてきていないかと二匹の後ろに銃口を向ける。

親はいない。二匹だけ。
すぐに手前のウリ坊に銃口を向けなおす。
目が合った。

「何だろう…。」

そんな顔をした後、
すっとウリ坊が左を向く。

耳に向けてスラッグ弾を発射!
反動で少しのけ反る。

パタッとウリ坊が倒れる。
(イメージでは)

しかし本物は、トコトコ左の谷へ。
後ろのウリ坊は右下の谷へ。

当たらなかったのに落胆したのか。

二発目も打たず、追いかけることもせず。
一息吐いて、スマホをリュックに入れて尾根をさらに登り出す。

頂上手前で、また森の音を聞くために止まってみるも、動物の足音などは聞こえず。
尾根を来た方向へ戻る。
撃ち漏らしたところまできて跡形をみてみるが、
どこに弾が当たったのかさえ分からず。薬莢も谷側へ落ちたようで見つからず。

尾根下の通いを通って、比較的広い斜面を降りる。
そのままほぼ直進しながら、どしどし歩いて元の林道まで30~40分ほどで戻る。

・スラッグ弾じゃなくて、6粒なら2匹とも転ばせられたか?
・頬づけ、照星にウリ坊が乗っておらず狙いが甘かったか?
・肩付けをしっかりせず、手が大きくぶれたか?
・引き金を引くとき銃口がぶれたか?
・5mとすぐ近くだったので、油断があったか?

仕留めるまでは油断禁物。
引き金を引くまでの動きを習慣化する。
咄嗟でも、完璧にできるように。

「次は外さんぞ!」

全部で4時間ほど。
山では午後3時前には、少し暗く感じる。
谷を進むときには、要注意。

7日目
疲れが溜まってきたか、体が少し重い。
今日はいつもの林道から右側の谷へ。
20分ほど谷沿いを登っていくと、左斜面の上部を中型の鹿が駆け上がる。
距離25m。
杉や樫の木などの枝が多く、ちらちらと木々の間から逃げる姿が見える。

それ以降は、猪も、鹿も見ず。
遠くても、最初に見たときに撃った方が良かったか。今年はまだ一年目。
射撃も練習中だから、自分の癖、銃の癖を知るためにも、無駄弾も必要だろう。

8日目
この日は、林道の手前からすぐに通い沿いに左側の尾根に向かう斜面に取り付くが、途中は急で竹や小さな灌木が多く、その間を四つん這いになっても上手く進めず。すぐに下の方向の通いを通って、鹿を追うことにする。

ただ、今日は森がいつもと違って、音がない。
とても静か。

いつもの林道へ下りて、奥の沢から右の尾根の急斜面を登る。
昨日よりも体が重く、息が上がる。

途中、15分静かに待ってみる。
やっぱり音はせず。

尾根の頂上で弁当を広げる。
15cmほど、背中に横縞のあるコゲラが4,5羽頭のすぐ上で、木をつついている。
力強い音が続く。
ほんの1mほどに近づいても、逃げないんだな。
そのうちのコゲラに目白が一羽寄ってきたが、すぐ威嚇されて逃げだした。

9日目
日没一時間前に出発。いつもの林道の奥まででタイムアウトとなる。
森は静か。やはり明日からは同じ山の奥、尾根沿い深くに行ってみるか。それとも山を変えるか。

10日目
朝一番に新しい猟場へ。
下見もせずに行ったから大変だった。
下に沢が見える山と谷。沢のすぐ上の泥の場には、ヌタバがあった。
新しい足跡も。沢の上の小径から見たとき、獣の動く時に出る枯葉や枝を踏む音がした。

けれども山に上がってみると1mを超すシダが生い茂り、登るのに一苦労だった。そして谷に降りることも。
谷に降りたら小径があり、なんとか小一時間沢沿いを上がったけれど、雑木の枝が多くて、鹿が鳴いても姿さえ見えずに断念。
沢から下まで降りて、探検部の基地へ戻る。

次に、いつもの猟場へ。
左の尾根まで登り、ぐるっと大きく3つの山の尾根を環状に回ってくる。
2時ごろ、一番奥近くの南側の尾根下に小型の鹿が二頭鳴いて、走り去る。30mの谷下、木々の間に一瞬見えただけ。

谷を降りて追ってみる。しばらく待つも何も動かず。
灌木が生い茂る急斜面を再び登り、尾根を越え北側の斜面をできるだけ平行に、ゆるやかに下りる。
日も陰ってきたとき、斜面の上方に鹿が鳴く。
今度は、照星を鹿に合わせ、進行方向に合わせて銃身を動かす。
もう一度姿が確認できれば、撃てた。
けれども、木々の陰で、二度目は見えず。

でも、この経験は大きかった。
次は撃てる。
20171220

11日目
昨日は頑張りすぎた。
一歩山にはいると、体が重いのが分かる。

林道の入り口の一番手前から尾根沿い、すぐの谷をまっすぐに上がって
尾根伝いにぐるっと猟場を回る予定だった。

心折れる。
一番奥の尾根から、手前の沢へ向けて、まっすぐ降りてくる。
急すぎて、足を滑らせた音に子鹿が驚いて尾根を走る。
尾根向こうに安土がないため、銃口で追ったが撃てず。

疲れたときは、谷の上で1時間くらい待ち伏せするのもいいかも。
20171221

12日目
今日は午後からの出猟に。
いつもの林道から早めに左の尾根に上がり、
2時間で尾根沿いに猟場の山を一周してきた。

鹿、猪の形跡は多いが、
昼からの猟では、全く姿を見ず。鳴かず。

昼間は別のところに行ってるのかな。
午後の猟の時は、どこか違うところへ行けるように場所を探さんといかん。
あとは、日の出に合わせて、猟場に着けるように
もっと早めにでるのも試そう。

今日は初日以来、目視できた鹿猪がゼロだった。
20171223

ーーーー
九州へ2週間の遠征
その間に、海外のハンティング映像をまとめて見る。
その時のメモ書き。基礎の見直しも。

・止まらず、鹿のように足を上げてやさしく地面に足を乗せながら歩く。
・狩場に1時間前に着いておく。
日の出前から到着し、日の出後の1時間が大きい鹿を撃つチャンス。

・ゆっくり2~3歩ずつ歩いては止まり、周りを確認する。
・道を歩くときは、木や葉の近くを歩く。

・如何にその状況下で、安定して銃を撃てるか。
木に銃身や肩、左手、右手など体の一部を接して支え固定する。
猟場の特長に合わせて、必要なら猪や鹿の逃げる動きに合わせて、銃も安定して動かせるようにする。

・気づかれないように、ゆっくり挙銃し、銃口を向ける。
動物が木の陰に入ったら、こちらが見えないので、
その時に大きく動く必要があるなら動く。

・撃った後は、毎回脱砲する。

猟の候補地を探す。
・一週間ごとに猟場を変える。
ーーーー

13日目
2週間の九州遠征の後、徳島に戻る。
今日は久しぶりなので、猟が可能な日の出(7:08)から猟場に入る。
しばらく山に入っていないので、どれだけ動物に合うかと楽しみ。

昨日一日、夕立のような強い雨だったので、
山の落ち葉も土も湿って足音も響かずに歩きやすい。
その上、休み中に学んだFox Walkで、いつもに増して音の出ない歩き方になっている(気がする)。

いつもの林道の突き当りから、右の谷へ。
沢沿いに上がって、途中から左の尾根に取り付く。
尾根沿いから少し右の谷へ下ったり、上がったりを繰り返し、一番奥の尾根へ到着。

目白の小さな鳴き声やコゲラのコッコッコッコッコッコッコッという
木の幹を突く音が響く。
谷を越えた左側の尾根からは、サルが騒いでいる。
その他には、鹿も猪も姿も見えず、鳴き声もせず…。

久しぶりの急斜面で、息が切れがち。
山の頂上すぐ下で、以前鹿2頭を見た南側斜面へ向かう。
山に入ってから三時間、すっかり日も出て南側は日向で鹿もいるはずと。

10分ほどかけて、20mの距離をゆっくり移動しながら、木々の間の鹿を探す。
いそうな雰囲気だけれど、発見できず。鹿も鳴かず。

11:10。
目は南側の斜面を見らみつつ、腹も減ったので、少し早めの昼食をとる。
何も動かず。

尾根沿いに、南の斜面を見ながら移動して10m進む。
7~8m先の尾根で、小さくフゴッと鳴き声がした!
振り向くと5~60kgの猪が二頭、こちらに先に気づいて、
尾根の右と左へ分かれて谷へ逃げ込むところ。

すぐに銃口を向けて狙いをつけるが、ちょうど尾根は上がっていて、もし狙いを外すと弾は尾根向こうへ行ってしまうため撃てず。
後から逃げた猪を追って、右の谷へ駆け降りるも、その時にはもう谷の奥へ逃げて猪の姿は見えず。2~30m先で枝の折れる音が小さくするだけ。

くっ~。またか。

天を仰ぎつつ、息を吐いて、また尾根を上がる。
しかし、五歩も歩かないうちに、更に10mほど先に四頭のどんこが右の谷へ向かって駆け出した。

銃口を向けたときには、先頭の1、2頭目はもう姿はない。
3頭目は、谷の下へ向かっている。
4頭目は、二歩小さく歩いてこちらを振り向いた。

その首元を狙って、ドン

狙い通りに弾が当たり、猪が谷へ転落。
5m下の灌木に引っかかり、足をばたつかせている。
更に3m落下。

脱砲して、谷を駆け降りる。これ以上落ちたら上げるのが大変。
ナイフを腰の鞘から取り出し、止めさし。
11:20 はら抜き20kg、春に生まれた雌の猪でした。猟人生、初めての一頭。

追記
以前に5m先の二頭いたどんこの狙いを外した時には、
あまりに近くで外しようもないから、銃のせいかもとちょっと疑ったこともあったけど、今回の命中で、前回は全くの自分の腕のせいだと判明。そして反省。

20180109