猪六頭が目前から逃げていった後に…

 

今季初の雌鹿
猟期に入って初の雌鹿です。

【出猟三日目】
今日は昼前から、師匠一家と昨年に続いて二度目の出猟予定でした。

その前に「今日も何か掛かってそう」と足音控え目に罠を見に行ったのでした。
3つ目のワナから30mほどの距離まで来たとき、

ガサガザガザ、「ブシュ!」 ドドドドドドドドドドドドドド

5頭の猪が慌てて背後の急斜面へ登っていきます。
罠の道具しか持っていない私は、ただそれをじーっと見ているだけ。

確認していたのは、どの辺にいて、どのルートで逃げて、どれくらいの大きさだったかくらい。

それから5秒ほど遅れて、
「なんでみんな逃げてるの?」って顔をした一番小さいやつがゆっくりみんなの後を追っていきます。「みんな待ってー」。

これはまだいけるかも。
そう思って、急いで車に戻って銃をとってきました。
でも、さすがに一頭も斜面の上にはいません。

それでも、猟二年目の今年は諦めず。
慌てず、音を立てず、急斜面沿いに谷側へゆっくり登っていきます。
(逃げた方ではなく、奥の斜め上の方へ)
谷向こうの斜面と、こちらがわの斜面の上を睨みつつ、ゆっくり。

反対の谷は影、こちら側には木漏れ日が、眩しいくらい差し込んできます。
灌木が生い茂ってはいるものの、反対の谷を見渡せる場所を見つけて、座る。

15分間で聞こえてきたのは、木の葉が落ちる音、鳥たちが鳴き動く、朝のいつもの音だけ。

5mほど斜め上に進み、椿の木々の青々とした葉の塊がすぐ下にある場所。山側の斜面は、もうシダで埋まっています。猪の出す音が聞こえないかと、その先をじっと見て、音を探していると、今度は真後ろの沢近くから、

「カサ、カサッ」と小さいけれど連続した音が!

首だけで振り向くと、5m下の通いを2歳くらいの雌鹿がのんきな顔で歩いています。
沢の水の音と灌木に隠れて、近づいてきているのに気づくのが遅れました。
何とか下に向きなおそうと体を半回転したとき、足元の枯葉が「カサッ」と小さな音を立てました。

その音に吸い付けられたように、鹿がクルっとこちらを見ます。
じっー。

ここでゆっくり銃を構えようかとも思いましたが、まだ体は半分左側を向いています。右側にいる鹿はすぐには撃てない。葉っぱが鳴れば、鹿は飛んでいってしまう。

そこで目をつぶって、木になりました。5秒もすると鹿は、また気楽に歩いていきました。
でも、鹿の向かった方向は、100m先は行き止まり。必ず戻ってくると信じて、その場に座り込んで待ちます。

10分、20分…。

今度は、山側の奥から「ガサッ、ガサッ」。
また「ガサッ」。5分経ち、また「ガサッ、ガサッ」と音が近づいてきます。

音がする度、灌木の間を覗き、銃を構えます。
でも、反対側からも、さっきの雌鹿が今にも戻ってくるかもしれない。

音が止まれば、また雌鹿が去った方へ銃を向けます。
灌木の間では、音を出さずに銃を構えなおすのは、意外と大変です。

そんな時、戻ってきました!
足取り軽く、こちらに気づかずやってきました。

灌木の間から、斜面の斜め右下に頭が見えます。
首から下の体も見えた!「よし」

ズドン。

今年の銃の一頭目は、体重40㎏弱、2歳ほどの雌鹿でした。
去年の鹿を追った苦労を思うと、嘘のようです。

「一犬、二足、三鉄砲」
猟に大事なもの順番です。

犬なし、単独の忍び猟をする今の私にとっては、
「一猟場、二我慢、三我慢」です。